タワマン2階と30階、価格はいくら違う?プロ査定で検証してみた

はじめに|タワマンは「階数」でいくら変わるのか?

タワーマンションの購入や売却を検討していると、多くの方が気になるのが「階数による価格差」です。2階と30階ではどのくらい違うのか。感覚的には“かなり違う”と思われがちですが、実際の数字はどうなのでしょうか。本記事では、プロが使用する査定ソフトを用いて、同一マンション内で階数のみを変えた場合の価格差を具体的に検証します。

今回の検証条件について

使用した査定ソフト

今回の検証では、公益財団法人である不動産流通推進センターが提供する「既存住宅価格査定マニュアル」を使用しています。これは実務の現場でも活用されている評価ソフトで、感情や主観を排除した客観的なスコアリングが可能です。

モデルとなる成約事例

基準となるのは、以下の条件で実際に成約した住戸です。
・床面積:83.01㎡
・階数:19階
・向き:南向き
・成約価格:1億1,980万円

この住戸の評点は「75.2点」と算出されました。

この部屋を基準として、
・同じマンションの2階だったら?
・同じマンションの30階だったら?
という形で、階数以外の条件を変えずに比較します。

2階の査定結果|いくらになるのか?

2階の評点と査定価格

2階の評点は「66点」。
査定価格は1億514万円という結果になりました。

19階との差額

19階(1億1,980万円)との差額は
1,466万円のマイナス
となります。

感覚的には「もっと差がつくのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、同一マンション・同一面積・同一方位という条件では、この程度の差に落ち着くというのが客観的な結果です。

30階の査定結果|プレミアはどの程度か?

30階の評点と査定価格

30階の評点は「77.4点」。
査定価格は1億2,330万円となりました。

19階との差額

19階との差額は、
350万円のプラス
です。

19階から30階へ、11階も上がっているにもかかわらず、価格差は350万円。1階あたりに換算すると約31万円の差という計算になります。

2階と30階の差はどれくらい?

今回の最大のテーマである「2階と30階の差額」は、
1,816万円
となりました。


28階分の差で1,816万円ですから、1階あたり約64万円の差ということになります。


この数字をどう感じるかは人それぞれですが、「想像より小さい」と感じる方も少なくないのではないでしょうか。

1階数ごとの単価差を分解してみる

19階→30階(上方向)

・差額:350万円
・階差:11階
・1階あたり:約31万円

19階→2階(下方向)

・差額:1,466万円
・階差:17階
・1階あたり:約86万円

興味深いのは、上に上がるよりも、下に下がる方が価格の落ち幅が大きい点です。

これは、低層階特有のデメリット(採光・プライバシー・眺望など)が価格に強く影響していることを示しています。

最上階だった場合はどうなる?

今回の30階は最上階ではありません。このマンションは40階以上ある想定です。

もし30階が「最上階」だった場合、査定価格は1億2,649万円
となり、さらに約300万円上昇します。

やはり「最上階」というブランド力は明確なプレミアムを持つことが分かります。

価格差を左右するその他の要素

角部屋

角部屋は希少性が高く、採光面が増えるため評価は上がります。

眺望(海・富士山・花火)

湾岸エリアなどでは、
・海が見える
・富士山が見える
・花火が見える
といった要素で価格は大きく変わります。

例えば、横浜駅周辺では花火大会の開催頻度が高く、眺望価値がより強く価格に反映される傾向があります。

日当たり

低層階では周囲の建物の影響を受けやすく、日照条件が価格に直結します。

売却を検討している方へのポイント

「階数が高い=大幅に高い」ではない

感覚だけで価格を決めると、売り出し価格が相場から大きくズレる可能性があります。

客観的査定が重要

プロが使う査定ソフトは、
・階数
・方位
・面積
・眺望
・最上階プレミア
・希少性
などを点数化して評価します。

特に成年後見人や相続案件では、合理的根拠のある査定が不可欠です。

タワマンの価格差は「思ったより理性的」

タワーマンションは感覚的な世界と思われがちですが、実際の価格形成は非常にロジカルです。

もちろん実際の市場では、
・市況
・需給バランス
・金融環境
・購入者属性
なども影響しますが、階数単体で見ると今回のような差に落ち着きます。

なぜ「下がる方」が大きく価格に影響するのか?

今回の試算で特に印象的だったのは、19階から30階へ上がるよりも、19階から2階へ下がるほうが価格差が大きかった点です。
これは単に「高いほうが人気」という単純な構図ではなく、不動産評価のロジックが関係しています。

心理的な安心感の差

タワーマンションを購入する層は、ある程度の眺望や開放感を前提に検討しているケースが多い傾向にあります。
そのため、「中層階以上」という一定ラインを超えていれば、眺望満足度は大きくは変わらないことが多いのです。

しかし低層階になると、
・前面建物との距離
・通行人の視線
・植栽や構造物の影
・騒音
などの影響を受けやすく、生活イメージが大きく変わります。
つまり「一定水準を下回ると一気に評価が落ちる」構造になっているのです。

需要層の広さの違い

例えば30階の部屋は、
「高層が好きな人」「中層でも良い人」の両方が検討対象になります。

一方で2階は、
「低層でも良い人」にしか響きません。

購入検討者の母数が違えば、当然ながら市場価格にも反映されます。
これが1階あたり86万円という差に表れていると考えられます。

実務でよくある誤解

「10階違えば1,000万円違う」という思い込み

売主様の中には、
「10階違えば1,000万円は違うでしょう」
という感覚をお持ちの方もいらっしゃいます。

しかし今回のモデルでは、19階から30階へは11階差で350万円。
1階あたり約31万円という結果でした。

もちろん物件ごとに違いますが、
“感覚的なプレミア”と“実際の市場評価”にはズレがあることが分かります。

「高層階なら必ず売れる」わけではない

価格が高くなれば、購入できる層は限定されます。
金融機関の融資審査や自己資金条件によって、ターゲットは狭まります。

つまり、高層階は「売れやすい」のではなく、
「条件が合えば強い」というのが実情です。

階数以外の“見落としがちな評価ポイント

エレベーター位置との関係

高層階でもエレベーターから遠い住戸は評価が伸びにくい場合があります。
逆に低層階でも動線が良いと一定の人気を保つことがあります。

ゴミ置き場・共用施設との距離

タワーマンションは共用施設が充実していることが多いですが、
その利便性は住戸位置によって体感が異なります。

修繕積立金・管理費の水準

築年数が進むと、管理コストの影響が価格に直結します。
高層階プレミアよりも、維持費のバランスの方が購入判断に影響するケースもあります。

売却戦略としてどう活かすか

高層階オーナーの場合

・「最上階」かどうか
・角部屋かどうか
・眺望の具体的内容
これらを言語化し、写真や動画で明確に伝えることが重要です。
単に「30階です」と書くだけでは、価格差を最大化できません。

低層階オーナーの場合

2階だからといって悲観する必要はありません。

・エントランスまでの近さ
・災害時の安心感
・エレベーター待ちの少なさ
・庭や植栽の緑
こうした“低層ならではの価値”を前面に出すことで、
ターゲット層に刺さる売却が可能になります。

数字を知ることが最大の武器になる

今回の検証では、
2階と30階で1,816万円差という具体的な数字が出ました。

しかし大切なのは、
「いくら違うか」だけではありません。

・なぜその差になるのか
・どこを伸ばせば価格が上がるのか
・どこが弱点になるのか
これを理解しているかどうかで、
売却結果は大きく変わります。

タワーマンションは感覚的に語られがちですが、
実際は非常にロジカルな世界です。

だからこそ、
データに基づいた判断が重要になります。

まとめ|2階と30階の差は1,816万円

今回の検証では、同一マンション・同一条件で階数のみを変えた場合、2階と30階の価格差は1,816万円という結果になりました。上に上がるよりも、下に下がる方が価格の下落幅は大きいことも特徴的です。ただし、この差額は絶対的なものではありません。最上階プレミア、角部屋、眺望、日当たりなどの要素によって大きく変動します。タワーマンションの売却・購入を検討する際は、感覚ではなく、客観的な査定に基づいた判断を行うことが重要です。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。