不動産売買のトラブルを防ぐ「付帯設備表」とは?エアコン・給湯器・カーテンの扱いを宅建士が徹底解説
不動産売買のトラブルを防ぐ「付帯設備表」とは?エアコン・給湯器・カーテンの扱いを宅建士が徹底解説
不動産売買は、人生でも数少ない大きな取引です。そんな重要な場面で意外とトラブルになりやすいのが「設備があると思っていた」「使えると思っていた」といった思い込みのズレです。こうした行き違いを防ぐために活用されるのが「付帯設備表」です。本記事では、付帯設備表の役割や記載のポイント、特に揉めやすいエアコンやカーテンの扱いについて、宅建士の視点から詳しく解説します。
付帯設備表とは何か?
付帯設備表とは、不動産の売買契約時に「建物にどのような設備があり、それが現在どのような状態か」を売主が買主に告知するための書類です。
不動産会社によって書式は多少異なりますが、一般的には給湯器、キッチン設備、浴室設備、空調設備などについて、
・設備が「ある・ない」
・現在使用できるかどうか
・不具合の有無
といった項目をチェック形式で記載していきます。
法律上、付帯設備表の作成は必須ではありません。しかし、実務上はトラブル防止の観点から、ほとんどの不動産会社が作成しています。
なぜ付帯設備表が必要なのか?
「あると思っていた」が一番危ない
不動産売買におけるトラブルの多くは、「思っていたのと違う」という認識のズレから生じます。
例えば、
・エアコンが付いていると思っていたのに、引っ越し時に売主が持っていってしまった
・カーテンが付属すると考えていたが、実際は撤去されていた
・給湯器があるから使えると思っていたが、実は壊れていた
こうしたケースは決して珍しくありません。
もし事前に壊れていることが分かっていれば、
「それなら価格交渉をしたのに」
「修理費用を見込んで判断したのに」
といった不満が後から出てきます。
付帯設備表は、こうした“後出しの不満”を防ぐために、「現状この状態で引き渡します」と明確にする役割を持っています。
付帯設備表の主な記載内容
給湯設備の確認
付帯設備表では、まず給湯関係の設備から確認することが多いです。
・電気式給湯器(オール電化)
・ガス給湯器
・都市ガス
・プロパンガス
・灯油ボイラー
どのタイプの給湯設備なのかを明記し、さらに「使用可」「不具合あり」などの状態を記載します。
なお、都市ガスかプロパンガスかといった供給形態は、重要事項説明書でも説明される内容ですが、設備として何が設置されているかを付帯設備表で改めて明確にしておくことが重要です。
特定保守製品の確認
給湯器などの中には「特定保守製品」に該当するものがあります。対象製品には本体にその旨が記載されていますので、該当する場合はチェックを入れます。
これは法令に基づき、一定期間ごとの点検が推奨・義務付けられている機器のことです。見落としがないよう、現物確認を行いましょう。
中古物件ならではの考え方
中古住宅の場合、多少の傷や汚れは当然あります。
契約書には通常、「本物件は中古であるため、経年劣化や軽微な不具合がある可能性がある」旨が記載されています。
そのため、
・小さな擦り傷
・軽微な使用感
といったものまで細かく記載する必要はありません。
ただし、
・大きな穴が開いている
・明らかに破損している
・使用に支障がある
といった場合は、きちんと告知することが望ましいです。
大切なのは、「売主が認識している事実を正直に書く」という姿勢です。
特にトラブルになりやすい設備
空調設備(エアコン)
空調関係は、付帯設備表の中でも特にトラブルが起きやすいポイントです。
よくあるのが、
・買主は「エアコンは付いてくる」と思っていた
・売主は「エアコンは動産だから持っていくもの」と思っていた
という認識の違いです。
エアコンは原則として動産扱いです。つまり、売主が撤去してもおかしくありません。
しかし、設置された状態で内見をしていると、買主は「当然付いてくる」と思ってしまうことがあります。
さらに注意すべきなのは、「付いていれば良い」というものでもないという点です。
古いエアコンが置きっぱなしになっていると、
・処分費用がかかる
・電気代が高い
・故障リスクが高い
といったデメリットがあります。
そのため、
・現在何台設置されているのか
・何台撤去するのか
・最終的に何台残すのか
を具体的に記載することが理想的です。
「サービスで置いておきました」は、必ずしも親切とは限りません。最新機種なら歓迎されるかもしれませんが、古い機種ならトラブルの火種になります。
カーテン・カーペットの扱い
カーテンも基本的には動産です。原則として売主が撤去します。
しかし、買主が
「このカーテン素敵ですね。残してもらえますか?」
と希望することもあります。
売主が同意すれば、「あり」として残すことも可能です。
また、カーペットについても注意が必要です。
・敷き込みカーペット(固定されているもの) → 原則撤去しない
・フローリング上に敷いてあるカーペット → 動産なので撤去が原則
このように、固定されているかどうかで扱いが変わります。
最終的には売主・買主双方の合意があれば問題ありませんが、「だろう」と思い込まず、必ず書面に残すことが重要です。
「だろう運転」をしないことが大切
不動産取引で最も危険なのは、「きっとこうだろう」という思い込みです。
・買主は使うだろう
・売主は持っていくだろう
・壊れていても大丈夫だろう
この“だろう運転”が、後々のトラブルにつながります。
悩んだ場合は、売買契約時にその場で相談し、合意内容を付帯設備表に反映させるのが安全です。
契約から引き渡しまでの注意点
売買契約締結後から引き渡しまでの間に、
・設備が壊れた
・壁に穴が開いた
といった事態が発生することもあります。
原則として、「契約時の状態で引き渡す」ことになります。
そのため、契約後は「もう半分は買主のもの」という意識で大切に保管することが重要です。万が一破損した場合は、補修のうえで引き渡すことになります。
また、付帯設備表は売買契約時に作成するのが一般的ですが、事前に売主様ご自身で設備の状況を確認しておくことも大切です。長年使っていない設備があれば一度動作確認をしておく、説明書や保証書が残っていれば整理しておくなど、少しの準備が後々の安心につながります。買主様にとっては「きちんと管理されてきた家」という印象にもなり、結果的にスムーズな取引へとつながっていきます。
付帯設備表を作らないケースはある?
例外的に、建物に価値がないケースでは作成しないこともあります。
例えば、建物は無償扱いといった場合です。
しかし、それ以外の通常の中古住宅取引では、基本的に作成するのが一般的です。
もし不動産会社から
「付帯設備表は作りません」
と言われた場合は、慎重に検討した方がよいでしょう。
付帯設備表は義務なのか?
付帯設備表は法律上の絶対義務ではありません。
しかし、不動産という高額な取引において、トラブルを未然に防ぐための非常に有効な書類です。
特に買主は不安になりやすい立場です。
だからこそ、
・何が残るのか
・何が使えるのか
・どこに不具合があるのか
を明確にすることが、安心感につながります。
まとめ
付帯設備表は、不動産売買における「認識のズレ」を防ぐための重要な書類です。エアコンやカーテン、給湯器など、日常的に使用する設備ほど思い込みが生じやすく、トラブルの原因になりがちです。法律上の義務ではないものの、安心・安全な取引のためには作成することが望ましいといえます。不動産は大きな買い物だからこそ、曖昧さを残さず、現状を正確に共有することが信頼関係の第一歩です。売主・買主双方が納得したうえで取引を進めるためにも、付帯設備表を上手に活用していきましょう。
この記事を書いた人

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宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。
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