不動産買換えで失敗しない!宅建士が解説する「5大注意点」と安全な進め方完全ガイド

はじめに|買換えは“順番”と“資金計画”がすべて

不動産の買換えは、「売る」と「買う」を同時に進める高度な取引です。一見シンプルに見えても、実は資金繰り・税金・スケジュールなど多くの落とし穴があります。本記事では、宅建士の視点から買換え時の5大注意点と、安全に進めるための具体策を徹底解説します。これから買換えを検討する方はもちろん、すでに契約済みの方もぜひ最後までご覧ください。

ケーススタディ|5,000万円で売って5,000万円で買う場合

例えば、
・現在の自宅を5,000万円で売却
・新居マンションを5,000万円で購入
というケースを想定してみましょう。

一見すると「プラスマイナスゼロ」で問題なさそうに感じます。しかし、ここに大きな誤解があります。

実際には、売却にも購入にも諸経費が発生します。さらに「引渡しのタイミング」という根本的な問題が潜んでいます。

まずは多くの方が思い描く理想的な流れを見ていきましょう。

多くの方が考える理想的な買換えの流れ

① 先に購入物件を契約する

良い物件を見つける

売買契約を結ぶ

「これで新居が確保できた!」と安心

② その後に自宅を売却する

自宅を売り出す

買主が見つかる

売却代金を受け取り、そのお金で購入代金を支払う

一見、理想的な流れに見えます。

しかし、ここに最初の大きな落とし穴があります。

最大の落とし穴|「この間、どこに住むの?」問題

不動産取引では原則として、
・売却:鍵を渡す=代金を受け取る
・購入:代金を支払う=鍵を受け取る
という同時履行の関係があります。

つまり、
売却代金をもらうためには
→ 先に自宅を明け渡さなければならない

購入物件の鍵をもらうためには
→ 先に代金を支払わなければならない

というジレンマが発生します。

「売却代金で購入代金を払う」予定だったのに、
・売却には引越しが必要
・購入には支払いが必要

この順番がかみ合わないのです。

これが買換え最大の論点です。

不動産買換えの5大注意点

ここからは、買換えで特に注意すべき5つのポイントを解説します。

① 諸経費の見落とし

売却にも購入にも、必ず諸経費がかかります。

売却時にかかる主な費用

・仲介手数料
・抵当権抹消登記費用
・印紙代
・測量費(戸建ての場合で土地の境界が不明な場合)
・解体費用(古家付きの場合)
・リフォーム費用(傷みがある場合)
・住宅ローン一括返済手数料

購入時にかかる主な費用

・仲介手数料
・所有権移転登記費用
・抵当権設定費用(住宅ローンを利用する場合)
・印紙代
・住宅ローン事務手数料
・火災保険料
・リフォーム費用(中古の場合)

例えば、
5,000万円で売却しても
→ 手取りは4,数百万円になる可能性があります。

5,000万円で購入しても
→ 総支払額は5,数百万円になることもあります。

つまり、差額は自己資金で補う必要があります。

「同じ価格だから大丈夫」という考えは非常に危険です。

② キャッシュフローの崩壊リスク

買換えでは、タイミングによって一時的に資金が不足する局面が発生します。

例えば:
・解体費用を先払いする
・リフォーム費用を先払いする
・購入時に手付金を支払う

しかしその時点では、まだ売却代金は入っていない可能性があります。

この間、資金がマイナスにならないか。
自己資金で対応できるか。

「最終的に帳尻が合う」ではなく、
「途中で資金ショートしないか」が重要です。

③ 譲渡税の発生

不動産を売却すると、利益に対して譲渡所得税が課税されます。

自宅の場合は3,000万円特別控除などの制度がありますが、
・取得費が不明
・相続物件
・投資用物件
などの場合は課税額が大きくなる可能性があります。

税金を想定せずに資金計画を組むのは非常に危険です。

④ 売れる保証がない

先に購入した場合、
「いつまでに代金を支払う」という期限が発生します。

しかし、
自宅がその期限までに売れる保証はありません。

売れなかった場合でも、
購入代金の支払い義務は消えません。

つまり、
売れなくても買えるか?
という視点が必要になります。

対策としては:
・ダブルローン
・親族からの一時借入
・自己資金投入
などがあります。

⑤ 買える保証がない

逆に、先に売却した場合。
今度は「理想の物件が見つかる保証がない」という問題があります。

・希望エリアに出ない
・価格が高騰する
・タイミングが合わない
この結果、仮住まいが長期化する可能性もあります。

心理的負担も大きいポイントです。

最も安全な買換えの流れ

リスクが最も低いのは、
売却を先に行う方法です。

流れは以下の通りです。
1.先に買主を見つける
2.引越しをする
3.売却代金を受け取る
4.その資金で購入する
資金面では最も安全です。

ただし、仮住まいが必要になる可能性があります。

どうしても先に買いたい場合の3つの方法

① 下取り保証(買取保証)

一定期間内に売れなければ、不動産会社が買い取る制度です。
メリット:売却リスクを限定できる
デメリット:価格は相場より低くなる傾向

② ダブルローン

売却完了まで2本の住宅ローンを組む方法です。

金融機関の審査が厳しく、
返済負担率の計算も重要になります。

③ 一時的な資金調達

・親族から借入
・退職金の活用
・保険の満期金
などがあります。

なぜ買換えはこんなにも難しいのか?根本的な構造を理解する

買換えが難しくなる最大の理由は、「売却」と「購入」がそれぞれ独立した契約であることにあります。

売却は売却、購入は購入。
それぞれに契約書があり、それぞれに履行義務があります。

売却では
・期日までに物件を明け渡す義務
・抵当権を抹消する義務

購入では、
・期日までに残代金を支払う義務

があります。

つまり、「自宅が売れなかったから購入代金は払えません」という理屈は通らないのです。これは法律上も契約上も別物だからです。

多くの方が無意識のうちに「売れたら払えばいい」と考えてしまいますが、実務ではその順番を完全にコントロールすることは非常に難しいのが現実です。

理想と現実のズレ

理想:
売却代金が入る

そのお金で購入代金を支払う

現実:
購入契約をすると支払期日が確定する

売却は市場任せ(売れる保証がない)

このズレが、買換えの不安の正体です。

だからこそ「売却先行」が安全

売却を先に完了させれば、手元に確定した資金が入ります。
この状態であれば、購入は「予算内で確実にできる行為」になります。

確かに、
・仮住まいの手間
・引越しが2回になる可能性
・一時的な生活の不便さ
はあります。

しかし、資金リスクという最大の不安を排除できるという意味では、最も合理的な方法と言えます。

先に買う場合は“覚悟”と“裏付け”が必要

どうしても気に入った物件を逃したくない場合、先行購入を選ぶことも一つの選択です。

ただしその場合は、
・最悪、安値でも売却できるか
・一時的にダブルローンを払えるか
・自己資金で立て替えられるか
こうした「裏付け」が必要になります。

感覚ではなく、数字で確認すること。
ここが買換え成功の分岐点になります。

買換えは単なる住み替えではなく、資金計画を伴うプロジェクトです。順番とタイミングを誤らなければ、大きなトラブルは避けられます。焦らず、一つひとつ整理しながら進めることが何より重要なのです。

買換え成功のために必要な3つの視点

① スケジュール設計

売却と購入の決済日をどう合わせるか。
引渡し猶予をどう使うか。
仮住まい期間をどう最小化するか。

綿密な調整が不可欠です。

②総資金シミュレーション

・売却手取り額
・購入総額
・税金
・一時的資金不足
これらをすべて数値化することが重要です。

③ 最悪ケースの想定

・売れない
・買えない
・価格が下がる
・金利が上がる
最悪ケースでも破綻しない計画が理想です。

まとめ|買換えは「戦略」が9割

不動産の買換えは単なる売買ではなく、資金計画・税務・スケジュールを同時に管理する高度なプロジェクトです。特に「売却と購入の順番」「諸経費の見落とし」「売れない・買えないリスク」への対策が成否を分けます。感覚や勢いで進めるのではなく、必ず総合的な資金シミュレーションと複数の選択肢を持つことが重要です。正しい順番と準備を整えれば、買換えは決して怖いものではありません。安全第一で計画的に進めましょう。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。