あなたの実家、住宅ローン控除が使えなくなる土地かもしれません

最近、住宅ローン控除に関する税制改正の資料に目を通していて、改めて気になったテーマがあります。

令和10年(2028年)1月以降に新築住宅へ入居する場合、「災害危険区域等」に建つ住宅は、住宅ローン控除の対象から外れることになりました。

新しく家を建てる人向けの話だと思われるかもしれません。しかし私は、これは今、実家を所有している方にも関係のある話だと考えています。今日はそのことをお伝えしたいと思います。

「災害危険区域等」とは何か

まず、言葉の定義を整理しておきます。

「災害危険区域等」というのは、ひとつの区域を指す言葉ではなく、いくつかの危険区域をまとめた呼び方です。
具体的には、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域、そして建築基準法に基づいて自治体が指定する災害危険区域などが含まれます。業界では「災害レッドゾーン」とも呼ばれています。

これらは、自治体のハザードマップで「危険性が高い」と明確に判定されている区域です。

土砂災害、浸水、地すべりなど、それぞれ災害の種類は異なりますが、共通しているのは「行政が建築に制限をかけるレベルの危険性がある」と認定されている、という点。

令和10年以降は、こうした区域に新たに家を建てて入居する場合、住宅ローン控除が使えなくなります。

ただし、建替え前の家にご本人やご家族が5年以上住んでいた場合の建替えや、中古住宅の購入、リフォームについては、この制限の対象外とされています。

「売る側」として、この改正をどう見るか

ここからが、私が今日お伝えしたい本題です。

この制度改正は、単に「新築住宅の話」ではありません。

私は不動産を「売る」立場から見たときに、もっと重い意味を持つと感じています。

考えてみてください。

災害危険区域等にある土地は、これから新築する人にとって「住宅ローン控除が使えない土地」になります。

つまり、その土地を買って家を建てたいと考える人にとって、経済的なメリットが一つ減るということです。

出展:神奈川県宅建ジャーナル574号

控除が使えるかどうかは、数百万円単位の差になります。
例えば上限の5,000万円の場合×0.7%×13年=455万円にもなります。
同じ条件の土地が二つあって、片方は控除が使え、片方は使えないとしたら、買い手はどちらを選ぶでしょうか。

金額だけではなく、「そもそも危ない」と行政が言っている土地を好んで購入する人がいるのか?という点も踏まえる必要があります。

これは、災害危険区域等にある実家や土地の「売りやすさ」「資産価値」に、確実に影響してくる話です。
今はまだ規制対象外のエリアでも、将来的にハザードマップの指定が広がっていく可能性もあります。

「自分が所有している実家が、もしかしたらそういう区域にあるかもしれない」という意識を、今から持っておくことには大きな意味があると思います。

「自分が住み続けること」への不安はないか

もう一つ、お伝えしたいことがあります。

この改正の背景には、「災害リスクの高い場所での居住を、できるだけ抑制したい」という国の方針があります。

住宅ローン控除という経済的なインセンティブを使って、住む場所そのものを誘導しようとしているわけです。

ここで、ご自身に問いかけてほしいことがあります。

今住んでいる、あるいは相続した実家が、もしハザードマップ上の危険区域に該当しているとしたら、これから先もこの場所に住み続けることに、本当に不安はありませんか。

制度や税金の話を抜きにしても、災害リスクの高い場所に住み続けるという選択そのものについて、一度立ち止まって考える時期に来ているのかもしれません。

幸い、各行政で住み替えや崖の補修などについて金銭的負担を用意していることもあります。

子どもに相続させることについて、ご相談を受けた話

実際に、こうしたご相談を受けたことがあります。

ご実家が、ハザードマップで色のついているエリアにあるという方からのご相談。

ご本人はもう長年その家に住んでいて、特に不便を感じてはいない。
万が一災害が来てもそれは自分の人生なので受け入れる心づもりはある。

ただ、将来的に子どもに相続させることを考えたとき、「この家を子どもに継がせて本当にいいのか」という迷いを抱えていらっしゃいました。

子ども自身がそこに住む可能性は低い。
だとすれば、いずれ空き家になる可能性が高い。
災害リスクのある土地であれば、いざ売ろうとしたときに買い手が見つかりにくく最悪手放したくても手放せないのではないか?

このご相談で私が感じたのは、「住み続けるかどうか」「相続させるかどうか」という判断は、もはや感情だけでは決められない時代になっている、ということでした。
土地の災害リスク、将来の資産価値、子ども世代の負担。
それらを総合的に見て判断する必要があるのです。

総合的に考える時期に来ている

「この先も住み続けるべきか」「子どもに相続させるべきか」

これは、簡単に答えが出る問題ではありません。

愛着のある実家を手放す決断は、誰にとっても簡単なことではないでしょう。
けれど、制度の変化や災害リスクという外部の事実は、待ってはくれません。

私は、こうした判断を一人で抱え込まずに、まず状況を整理するところから始めてほしいと思っています。

お住まいの場所がどんな区域に該当するのか、将来の資産価値はどう変化していきそうか、子どもにどう伝えていくべきか。

そうした整理のお手伝いを、日々の仕事の中で行っています。

「売る」と決めていなくても構いません。

まずは、今の状況を一緒に確認するところから始めましょう。

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