【遺産分割協議書の落とし穴】売却後に“兄弟バトル”勃発!?

相続した家を売ったのに、なぜ揉める?

相続した家を売ったのに、なぜ揉める
相続で親の家を引き継ぎ、「もう空き家だし売ろうか」と兄弟で話し合い、
無事に売却が完了――これで一件落着、と思いきや。

実はその後、

「取り分が違う」

「俺は売却に同意してない」

「そんな話、聞いていなかった!」

といった“売った後”のトラブルが起こることがあるのです。

原因は「遺産分割協議書」あり

その多くは、「遺産分割協議書」に原因があります。

遺産分割協議書とは?簡単に言うと「財産の分け方を決めた証拠」
相続が発生したとき、法定相続分に沿って機械的に分ける方法もありますが、
実際には「誰が何をもらうか」「どう売却するか」を話し合って決めることが多いですよね。

その話し合いの内容を、書面にして残すのが「遺産分割協議書」です。

これは不動産の名義変更や、預金の払い戻しにも使われる、非常に重要な書類です。

協議書が“曖昧”だったせいで揉めたケース。


たとえばこんな事例があります。

【事例】
3人兄弟が父の遺産を相続。実家は空き家で、売却して現金を3等分する予定だった。
だが、作成された協議書には、「遺産は3人で分割する」としか書かれていなかった。
不動産の名義は長男にし、売却は長男が主導。
売却後、次男が「売却金が思ったより少ない」と不満を言い出し、
「長男が多めに取ったんじゃないか」と兄弟間で対立。
結果、売却後に揉め、家庭裁判所で調停へ…

このケースでは、「遺産分割協議書にどう売るか?具体的な分け方が書かれていなかった」ことが問題でした。
つまり、協議書の“書き方ひとつ”で、後々の信頼関係が崩れてしまったのです。

よくある「危ない協議書」の特徴

  • 分け方が曖昧(「均等に」だけで済ませている)
  • 不動産の評価額や売却予定の記載がない
  • 誰が売却の手続きを担うのかが明記されていない
  • 「誰が何を取得するか」より「全員で共有」となっている

このような協議書だと、実際に売却したあとで揉める可能性が非常に高くなります。

どうすれば防げる?事前の“想い”と“設計”がカギ

実は、こうしたトラブルの多くは、亡くなった人の一言があれば防げたケースがほとんどです。

「この家は売って、平等に分けてほしい」
「手続きは長男に任せるように」

「●●不動産に話はしてある」

「相続登記は●●司法書士に、相続税申告は●●税理士に・・・」
「売却益は3人で均等に分ける」

こうした一言が、遺産分割協議の前提となる“親の意志”になります。

法的効力はなくても、こうした言葉がメモでも残っていれば、
相続人同士の話し合いの指針となり、揉める理由が減ります。

プチ遺言で防げる“未来の火種”
ここで、プチ遺言の出番です。

プチ遺言の出番

「自宅の処分方法」「売却後の分け方」「誰に手続きを任せるか」「兄弟姉妹に対する想い」

これらを、簡単な言葉で残しておくことが、協議書の内容を整えるベースになります。

さらに、司法書士や不動産業者と事前に連携しておけば、
相続後の手続きもスムーズかつトラブルのない形で進めることが可能です。

協議書は「書いたら終わり」ではない
遺産分割協議書は、ただの書類ではありません。
相続人同士の信頼関係を守る、重要な設計図です。

だからこそ、曖昧にしない。きちんと記録に残す。親の意志を反映する。

この3つを意識することが、相続のトラブルを避ける一番の近道です。

そして何より、親としてできるのは――
“プチ遺言”で、子どもたちが迷わない道しるべを残すこと。

それが、最もやさしい相続対策なのかもしれません。

この記事を書いた人

宅地建物取引士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。