相続した田舎の山林はどうする?売却できるケースと難しい理由を宅建士が解説vol1

「先祖が持っていた山を相続したけれど、一度も見たことがない」「固定資産税だけ払い続けている」――そんな悩みを抱えている方は少なくありません。実際、相続の現場では、存在すら知らなかった山林が遺産として出てくるケースが数多くあります。しかし山林は住宅地とは異なり、売却や活用が難しい不動産です。この記事では、田舎の山林を相続した場合の考え方や売却の可能性、山林特有の問題点について詳しく解説します。

相続で突然山林の所有者になることは珍しくない

山林に関する相談でよくあるのが、
・祖父や曾祖父が購入した山を相続した
・存在を知らなかった土地が相続財産に含まれていた
・現地に行ったことがない
・どこにあるのか正確に分からない
といったケースです。

特に地方では、昔から所有している山林が代々引き継がれていることがあります。しかし現在では林業が盛んだった時代とは状況が大きく異なり、山林の資産価値が低下している地域も少なくありません。

そのため、相続したものの「どう処分すればよいのか分からない」という悩みにつながるのです。。

山林は相続しても利益になりにくい不動産

山林の特徴として挙げられるのが、維持管理の負担に対して収益性が低いことです。

例えば、
・相続登記費用がかかる
・固定資産税が発生する
・草木の管理が必要になる
・境界確認費用が高額になる場合がある
など、所有しているだけで一定のコストが発生します。

一方で、住宅地のように賃貸収入が得られるわけではなく、売却しようとしても買い手が見つかりにくいケースがあります。

そのため、山林は「相続したくない不動産」の代表例として挙げられることもあります。

山林は本当に売れるのか?

多くの方が気になるのは、
「そもそも山林って売れるの?」
という点でしょう。

結論から言えば、山林は売却できる可能性があります。

ただし、
売れる=高く売れる
ではありません。

買い手が見つかったとしても、想像以上に安い価格になることは珍しくありません。

まずは、買い手がどのような目的で山林を購入するのかを理解することが重要です。

山林の主な活用方法

キャンプ場として活用する

近年のアウトドアブームにより、山林をキャンプ場として利用するケースがあります。

特に、
・ソロキャンプ
・ファミリーキャンプ
・グランピング施設
などへの需要が高まっています。

自然環境を活かせる立地であれば、観光資源としての可能性もあります。

ただし、実際に運営するためには駐車場や管理施設なども必要になるため、単純に山があればよいというわけではありません。

昆虫採集や自然体験施設

山林では、
・カブトムシ採集
・クワガタ採集
・自然観察
などの体験型施設としての活用も考えられます。

都市部では味わえない自然環境が魅力となるため、教育目的やレジャー目的で利用されることがあります。

山菜採りを目的とした利用

春になると山菜が豊富に採れる山林もあります。

例えば、
・タラの芽
・ワラビ
・ゼンマイ
・フキノトウ
などを採取できる環境であれば、趣味やレジャーとして価値を見出す人もいます。

ただし、継続的な収益を生む用途としては限定的です。

林業目的で利用する

山林本来の用途といえば林業です。

スギやヒノキなどの樹木を育成し、伐採・出荷することで収益化を目指します。

しかし現在は、
・木材価格の低迷
・人手不足
・管理コストの増加
などの課題があり、林業目的の需要は以前ほど高くありません。

農地への転用

日当たりや地形の条件が良い場合は、畑として利用できる可能性もあります。

ただし、
・農地転用の手続き
・開墾費用
・インフラ整備
などの問題があり、簡単ではありません。

電柱敷地としての利用

少し変わった例として、電柱が設置されている山林があります。

電柱が建っている場合、電力会社から土地使用料が支払われることがあります。

その収入を目的に山林を購入する人もいます。

ただし、使用料は決して高額ではなく、それだけを目的に購入するのは慎重に検討する必要があります。

ドッグランやアスレチック施設

近年では、
・ドッグラン
・アスレチック施設
・アウトドアレジャー施設
などへの活用も見られます。

広い土地を活かせる用途ですが、施設整備や管理体制の構築が必要になるため、事業として成立するかどうかの検討が不可欠です。

「いろいろ使えそう」は売却価格に直結しない

山林を所有している方の中には、
「キャンプ場にもできそうだし、アスレチックにも使えそう」
と期待する方もいます。

確かに用途の可能性はいくつも考えられます。

しかし不動産市場では、
実際に利用できるかどうか
が重要です。

活用アイデアが存在することと、実現可能であることは別問題なのです。

そのため、所有者が期待するほど高値で売れるケースは多くありません。

山林売却を難しくする法律上の問題

森林法の規制

山林の売買や利用では森林法が関係してきます。

森林には、
・森林計画区域
・保安林
などの指定がされている場合があります。

特に保安林では、
・勝手な伐採
・開発行為
・土地利用の変更
が制限されることがあります。

山林を購入したからといって自由に木を切れるわけではありません。

森林には、
・土砂災害防止
・水源保全
・環境保護
といった重要な役割があるためです。

こうした規制があることで、買い手が限定される場合があります。

民法上の境界問題

山林で特に大きな問題となるのが境界です。


住宅地であれば、
・ブロック塀
・フェンス
・境界杭
などが比較的明確になっています。

しかし山林では事情が異なります。

境界杭が見つからない

山林では、
・境界杭が埋もれている
・消失している
・そもそも設置されていない
というケースが珍しくありません。

そのため、
「どこからどこまでが自分の土地なのか」
が明確ではないことがあります。

境界確定には高額な費用がかかる

境界を正式に確定するためには、
・測量士への依頼
・隣接地所有者との立会い
・境界確認書の作成
などが必要になります。

山林は面積が広く、傾斜地も多いため、測量費用が高額になりやすい傾向があります。

場合によっては売却価格より測量費用の方が高くなることさえあります。

境界非明示で売買されることも多い

実務上、多くの山林は
「境界非明示」
という形で売買されます。

これは、
「正確な境界は不明だが、おおよその範囲で取引する」
というものです。

ただし購入後に、
・隣地所有者とのトラブル
・伐採範囲の争い
・利用方法を巡る対立
などが発生するリスクがあります。

入会権という特殊な問題

山林には「入会権(いりあいけん)」という特殊な権利が存在することがあります。

これは簡単に言うと、
地域住民全体で共同利用していた権利
です。

昔の農村では、
・薪の採取
・落ち葉集め
・山菜採り
などを共同で行っていました。

その歴史的経緯から、登記簿だけでは分からない権利関係が残っている場合があります。

そして厄介なのは、この問題が売却後に発覚するケースもあることです。

そのため、山林取引では事前調査が非常に重要になります。

都市計画法と建築基準法にも注意

建物が建てられない場合がある

山林を購入する人の中には、
・キャンプ場を作りたい
・グランピング施設を運営したい
・ドッグランを開設したい
と考える人もいます。

しかし、そのためには管理棟や事務所などの建築が必要になることがあります。

市街化調整区域の問題

土地が市街化調整区域に指定されている場合、
原則として建物の建築は厳しく制限されます。

市街化調整区域とは、
「市街化を抑制する地域」
だからです。

つまり、
「ここに建物を建てたい」
と思っても許可が下りない可能性があります。

活用アイデアは調査して初めて実現可能性が分かる

山林を見ると、
「ここならキャンプ場ができそう」
「ドッグランに向いていそう」
と思うことがあります。

しかし、
・都市計画法
・建築基準法
・森林法
・農地法
・自治体条例
などによって制限を受ける場合があります。

そのため、見た目だけで活用可能と判断することはできません。

専門家による事前調査が欠かせないのです。

山林を相続したら最初に行うべきこと

登記内容を確認する

まずは登記簿謄本を取得し、
・所在地
・面積
・地目
・所有者
を確認しましょう。

固定資産税評価額を確認する

評価額を確認することで、
・維持コスト
・売却可能性
・資産価値
のおおよその目安が分かります。

現地調査を行う

可能であれば現地を確認しましょう。

・接道状況
・傾斜
・伐採状況
・周辺環境
によって価値は大きく変わります。

専門家へ相談する

山林は一般住宅とは全く異なる知識が必要です。

・不動産会社
・土地家屋調査士
・行政書士
・司法書士
・林業関係者
などに相談しながら進めることが重要です。

まとめ

田舎の山林は売却できる可能性がありますが、住宅地のように簡単に売れる不動産ではありません。キャンプ場や林業、ドッグランなどさまざまな活用方法が考えられる一方で、森林法や都市計画法、建築基準法など多くの法規制が関係します。また、境界不明や入会権といった山林特有の問題も少なくありません。相続した山林を放置すると管理負担や税金の問題が続くため、まずは権利関係や法的規制を調査し、専門家へ相談することが大切です。適切な情報収集を行うことで、売却や有効活用の可能性を見極められるでしょう。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。