「『この近くで探しています』チラシは本当?不動産会社の本当の狙いと売主が知っておくべき注意点を宅建士が解説」

「この近くで探しています」というチラシは本当?不動産会社が配る理由と注意点

マンションや戸建てを所有していると、「この地域で探しています」「あなたのマンション限定で購入希望者がいます」といった不動産会社のチラシを目にすることがあります。
「そんなに需要があるなら高く売れるかもしれない」と期待する方もいるでしょう。しかし、そのチラシには売主を集めるための仕組みが隠されている場合があります。今回は「この近くで探しています」というチラシの本当の目的や、不動産売却を考える際に注意すべきポイントについて解説します。

「この近くで探しています」チラシの本当の目的

マンションに住んでいる方であれば、一度は「このマンションを購入希望のお客様がいます」「このエリア限定で探しています」という内容のチラシを見たことがあるのではないでしょうか。

一見すると、
「本当にこのマンションを欲しい人がいるんだ」
「今なら高く売れるチャンスなのかもしれない」
と思ってしまいます。

しかし、結論から言うと、これらのチラシの多くは実際に購入希望者がいるから配布しているわけではありません。

主な目的は、売却を検討している所有者を探すことです。

つまり、不動産会社が欲しいのは買主ではなく、「売りたい人からの問い合わせ」なのです。

チラシは売主を集めるために作られている

不動産会社が売却物件を預かるためには、まず売主と出会う必要があります。

不動産会社にとって、売却依頼を受けることは大きなビジネスチャンスです。

例えば、マンション所有者から、
「そろそろ売却を考えている」
「査定だけでもお願いしたい」
という相談が入れば、不動産会社はその物件を販売する権利を得られる可能性があります。

そのために、
「このマンションを探しています」
「この地域限定で購入希望があります」
「急いで購入したい方がいます」
という文章を使い、所有者の興味を引くのです。

「地元に戻る予定の購入希望者」というストーリー

このようなチラシには、よく似たパターンがあります。

例えば、
・地元出身で、将来的に戻る予定がある
・子どもの学校の関係でこの地域限定で探している
・転勤から戻るため急いで購入したい
・条件が合えば多少高くても購入する
といった内容です。

この文章を見ると、
「そこまで欲しい人がいるなら高く売れるかもしれない」
と感じるかもしれません。

しかし、ここで冷静に考える必要があります。

本当に購入希望者がいて、どうしてもその物件が欲しいのであれば、その人は市場に出ている売却物件を探すはずです。

不動産購入を考えている人は、基本的に「少しでも良い条件で買いたい」と考えています。

売主が思うほど、「多少高くてもいいから絶対に買いたい」という人は多くありません。

「このマンション限定」という言葉に注意

特に注意したいのが、
「○○マンション限定で探しています」
という表現です。

この言葉を見ると、
「うちのマンションは人気があるんだ」
「ここだけを探している人がいるんだ」
と思ってしまいます。

しかし、実際には近隣の似た条件のマンションや、同じエリアの別物件でも検討する購入希望者は多くいます。

購入者は「この不動産会社からしか買わない」と決めているわけではありません。

良い物件があれば、複数の不動産会社から情報を集め、その中から条件の良いものを選びます。

その状況で、不動産会社が本当に特定の一人の購入希望者のためだけに大量のチラシを配るでしょうか。

ここを考えることが大切です。

なぜ不動産会社はチラシにお金をかけるのか?

チラシを作成するには費用がかかります。

印刷代、人件費、配布費用など、決して無料ではありません。

それでも不動産会社がチラシを配る理由は、そこから売却相談につながる可能性があるからです。

つまり、
「購入希望者がいるから配る」
というより、
「売却相談を獲得するために広告費を使っている」
という側面があります。

不動産業界では、広告による問い合わせの中で実際に契約につながる割合は決して高くありません。

それでも広告を続けるのは、1件でも売却依頼につながれば大きな利益になるからです。

不動産会社の言葉ではなく、自分の目で判断することが大切

不動産売却では、売主側が一度「高く売れるかもしれない」と思い込んでしまうと、冷静な判断が難しくなることがあります。

「このマンションを探している人がいる」という言葉だけを見るのではなく、本当にその条件で購入する人がいるのか、その価格には根拠があるのかを確認することが重要です。

特に不動産は金額が大きいため、少しの判断違いで数百万円単位の差が出ることもあります。魅力的な話ほど、一度立ち止まって考えることが必要です。

大切なのは「売ってください」という営業トークではなく、自分の資産をどう活用するのが一番良いのかを一緒に考えてくれる専門家を選ぶことです。

チラシを見て「高く売れる」と思う前に確認すべきこと

「このマンションを探している人がいる」という情報だけで、
「今売れば高く売れる」
と判断するのは危険です。

売却を考える場合は、以下のような点を確認しましょう。

周辺の売却相場を確認する

まず重要なのは、自分の物件が現在どれくらいの価格で売れる可能性があるのかを知ることです。

同じマンションでも、
・階数
・方角
・専有面積
・眺望
・築年数
・部屋の状態
によって価格は大きく変わります。

「買いたい人がいる」という言葉だけでは、適正価格は判断できません。

複数の専門家から意見を聞く

売却を検討するときは、チラシを見てすぐ依頼するのではなく、信頼できる専門家に相談することが大切です。

確認したいポイントは、
・なぜその査定価格になるのか
・根拠となる近隣事例があるか
・売却以外の選択肢も説明してくれるか
という部分です。

良い不動産会社は、必ずしも「すぐ売りましょう」とは言いません。

場合によっては、
「今は売らずに貸した方が良い」
「半年後や1年後の方が条件が良い可能性がある」
など、所有者にとってメリットのある提案をします。

本当に購入希望者がいる場合との違い

もちろん、すべてのチラシが嘘というわけではありません。

実際に特定エリアで購入希望者を抱えているケースもあります。

ただし、本当に購入意欲の高い人がいる場合は、不動産会社から具体的な説明があります。

例えば、
・希望条件
・予算
・探している理由
・購入時期
など、現実的な情報が提示されることがあります。

一方で、
「急いでいます」
「多少高くても大丈夫です」
「このマンション限定です」
という魅力的な言葉だけが並んでいる場合は、慎重に判断した方が良いでしょう。

不動産売却で大切なのは「誰に相談するか」

不動産売却では、最初の相談相手選びが非常に重要です。

チラシの内容だけを信じるのではなく、
「この会社は根拠を説明してくれるか」
「メリットだけでなくリスクも話してくれるか」
「売却以外の選択肢も考えてくれるか」
という視点を持ちましょう。

不動産は人生の中でも大きな金額が動く取引です。

少しでも疑問がある場合は、複数の専門家に相談し、納得したうえで判断することをおすすめします。

まとめ

「このマンション探しています」「この地域限定で購入希望者がいます」という不動産チラシは、実際の購入希望者を紹介する目的だけではなく、売却を考えている所有者を探すために配布されているケースが多くあります。

もちろん本当に購入希望者が存在する場合もありますが、チラシの言葉だけを信じて「高く売れる」と判断するのは危険です。

不動産売却で重要なのは、魅力的な言葉ではなく、根拠のある査定や市場状況を確認することです。売却を考えたときは、チラシの内容だけで決めず、信頼できる専門家に相談し、自分にとって最適なタイミングや方法を検討しましょう。

売却することだけが正解ではなく、「今は売らない」「貸す」という選択肢が良い場合もあります。大切な資産だからこそ、冷静な判断をすることが重要です。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。