不動産購入で売主に選ばれる人とは?買主の優先順位と住宅ローン事前審査の重要性を宅建士が解説
マイホーム探しでは、「気に入った物件を見つけたら、申し込みが早い人が購入できる」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際の不動産取引では、申し込みの順番だけで売主が買主を決めるわけではありません。
売主には「より良い条件で売りたい」という考えがあり、価格だけでなく、支払い時期や契約条件も含めて総合的に判断されます。今回は、売主の視点から見た「買主の優先順位」と、マイホーム購入を成功させるために事前に準備しておきたいポイントについて解説します。
売主はどんな買主を優先するのか?
家を売る立場になったと想像してみてください。
もし同じタイミングで3組の購入希望者が現れたら、誰に売りたいと思うでしょうか。
実際の不動産取引では、このようなケースはそれほど多くありませんが、売主が買主を選ぶ考え方を理解するには分かりやすい例です。
不動産業界では、購入申込をした順番によって「一番手」「二番手」「三番手」という言い方をします。
基本的には最初に購入申込をした人が一番手となり、優先的に交渉を進めることになります。
しかし、「一番手だから必ず購入できる」というわけではありません。
売主は最終的に、自分にとって最も条件の良い相手を選ぶことができるからです。
買主の優先順位を決める3つのポイント
売主が買主を判断する際には、大きく分けて次の3つの条件を見ています。
1.購入価格
最も分かりやすいのが購入価格です。
例えば、
・一番手:3,000万円
・二番手:2,900万円
・三番手:3,300万円
という申し込みがあった場合、売主としては3,300万円で購入してくれる三番手の方に売りたいと考えるのが自然です。
そのため、一番手と二番手の方に対して、
「他に高い金額で購入したいという方がいますが、価格を上げることはできますか?」
と交渉が行われることがあります。
価格を上げられなければ、一番手であっても交渉が終了し、条件の良い買主へと話が進むことも珍しくありません。
つまり、申し込み順だけでは決まらないということです。
2.いつ代金を支払えるか
価格だけが重要とは限りません。
例えば、
・3,300万円で購入するが、支払いは6か月後
・3,000万円で購入し、1か月後には決済できる
この2人であれば、売主によっては早く現金化できる後者を選ぶ場合もあります。
売主には、
・住み替え資金が必要
・ローン返済を早く終えたい
・相続の関係で早く売却したい
など、それぞれ事情があります。
そのため、「高く売れること」と同じくらい、「早く確実に売れること」も重要な判断材料になります。
3.契約条件
もう一つ重要なのが契約条件です。
例えば、
・現金一括で購入できる人
・住宅ローン審査が通れば購入する人
・自宅が売れたら購入する人
この3人では、一般的には現金購入できる人のほうが有利になります。
もちろん住宅ローンを利用すること自体は珍しいことではありません。
実際には、不動産購入者の多くが住宅ローンを利用しています。
しかし売主からすると、
「本当にローンが通るのだろうか」
という不安はどうしても残ります。
つまり、契約に条件が付くほど、売買が成立しないリスクが高くなるため、優先順位は下がる傾向があります。
買主として意識すべきこと
ここまで売主側の視点を見てきました。
では、これを買主側に置き換えると、どのような準備が必要なのでしょうか。
答えはとてもシンプルです。
資金計画を整えてから物件探しを始めること。
これが何より重要です。
ローンが組めるかどうかも分からない状態で、
「この家を買いたいです」
と申し込んでも、売主からすれば安心して契約できる相手とは言えません。
一方で、
「住宅ローンの事前審査が通っています。」
「○○万円まで借入可能という承認を受けています。」
という状態であれば、売主も安心して交渉を進めやすくなります。
住宅ローンの事前審査は必ず受けておこう
マイホーム探しを始める前に、ぜひ済ませておきたいのが住宅ローンの事前審査です。
事前審査を受けておくことで、
・借入可能額が分かる
・無理のない予算設定ができる
・気に入った物件が見つかったらすぐ申し込める
・売主からの信頼を得やすい
といった多くのメリットがあります。
反対に、事前審査を受けずに物件探しをすると、
「気に入った家が見つかったのにローンが通らなかった」
という事態になりかねません。
結果として、時間も労力も無駄になってしまいます。
売主は「確実に買ってくれる人」を選ぶ
不動産取引では、「この人が一番最初に申し込んだから契約する」というほど単純ではありません。売主にとって大切なのは、最後まで問題なく契約を完了してくれる相手かどうかです。
例えば、一番手の購入希望者が住宅ローンの審査をこれから受けるという状況だった場合、売主としては「もし審査に通らなかったら、また最初から買主を探さなければならない」というリスクを抱えることになります。
一方で、後から申し込んだ方でも、すでに住宅ローンの事前審査を通過していたり、現金購入が可能だったりすれば、「こちらの方が安心して売却できる」と判断されるケースは珍しくありません。
つまり、買主として大切なのは「早く申し込むこと」だけではなく、「売主から安心して選ばれる状態をつくっておくこと」です。住宅ローンの事前審査を済ませ、借入可能額を把握し、すぐに契約へ進める準備ができていれば、人気物件の購入競争でも有利に進められる可能性が高まります。物件探しと同じくらい、事前準備も重要なポイントなのです。
実際にあった残念なケース
私自身、若い頃の実務で忘れられない出来事があります。
あるご家族が物件を見学し、ご夫婦だけでなくお子さんたちも「この家に住みたい!」と大喜びでした。広い部屋を見て、「ここが自分の部屋になるんだね」と夢を膨らませている姿がとても印象的でした。
その場で購入の意思を固め、住宅ローンの手続きへ進むことになりましたが、結果はまさかの審査否決でした。
原因は、自動車ローンの返済遅延による信用情報の問題だったのです。ご本人も「住宅ローンに影響するとは思っていなかった」と大変驚かれていました。
もちろん一番つらかったのは親御さんですが、楽しみにしていたお子さんたちが落胆している様子は、今でも忘れることができません。
もし物件探しを始める前に住宅ローンの事前審査を受けていれば、このような精神的なショックは避けられたかもしれません。
だからこそ、マイホーム購入では「まず資金計画、そして物件探し」という順番がとても重要です。気持ちが先走ってしまう前に、自分がどれくらい借りられるのか、住宅ローンに問題はないのかを確認しておくことで、安心して住まい探しを進めることができます。
まとめ
不動産購入では、「早く申し込めば買える」というわけではありません。売主は価格・支払い時期・契約条件を総合的に判断し、最も安心して取引できる買主を選びます。
そのため、購入希望者としては、物件探しよりも先に資金計画を立て、住宅ローンの事前審査を済ませておくことが重要です。現金購入が難しい場合でも、事前審査が承認されていれば売主からの信頼は高まり、購入できる可能性も大きく向上します。
マイホーム購入を成功させるためには、「良い物件を探すこと」だけでなく、「いつでも購入できる状態を整えておくこと」が何より大切です。準備を万全にしておけば、理想の住まいとの出会いを逃さず、スムーズな購入につなげることができるでしょう。
この記事を書いた人

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宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。
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