実家は資産とは限らない?相続で“負債”になる不動産の5つの特徴と今からできる対策

「実家は不動産だから、いざとなれば売ればいい」と考えている方は少なくありません。しかし実際には、売りたくても売れない「負債になる不動産」が存在します。相続後に維持費や税金だけがかかり、大きな負担となるケースも珍しくありません。本記事では、相続で困らないために知っておきたい「売りにくい不動産」の特徴と、生前からできる対策についてわかりやすく解説します。

実家は本当に資産なのか?

一般的に不動産は「資産」と考えられています。

確かに、売却して現金化できる不動産であれば資産と言えるでしょう。しかし、すべての不動産がそうとは限りません。

世の中には、買い手が見つからず、固定資産税や維持管理費だけがかかり続ける不動産もあります。このような不動産は、所有しているだけでお金を生み出すどころか、逆に支出を増やしてしまうため、「負債」となってしまう可能性があります。

特に相続では、親が大切に住んできた実家であっても、子ども世代には住む予定がなく、売却も難しいケースが少なくありません。

そのため、「実家=資産」という思い込みは危険です。

こんな実家は要注意!売りにくい不動産の5つの特徴

1.人口が減少している地域にある

不動産の価値は建物だけでなく、「その地域に住みたい人がいるか」に大きく左右されます。

人口が増えている地域は住宅需要も高く、売却しやすい傾向があります。

一方で、人口減少が続いている地域では購入希望者そのものが少なくなり、売却まで長い時間がかかることがあります。

自治体では人口推計や世帯数の推移を公表しています。

実家のある市区町村が今後どのような人口動向になるのか、一度確認しておくことをおすすめします。

2.道路との高低差が大きい

近年、売却しづらい不動産として特に増えているのが、高低差のある土地です。

例えば、
・玄関まで20段以上の階段がある
・道路から敷地まで急な坂を上る必要がある
・車椅子やベビーカーでの移動が難しい
このような住宅は、高齢化が進む現在では敬遠される傾向があります。

以前は地下車庫付き住宅なども人気がありましたが、現在は「階段が少ない」「バリアフリーに近い立地」を希望する購入者が増えています。

買い手が減れば、その分売却もしにくくなります。

3.境界がはっきりしていない

土地売買では、境界が明確であることが非常に重要です。

ところが実際には、
・境界杭がなくなっている
・ブロック塀のどこが境界かわからない
・昔の記憶だけで判断している
というケースが数多くあります。

売却時には測量を行い、隣地所有者と境界確認を行うことが一般的です。

しかし、お隣との関係が悪かったり、境界確認に協力してもらえなかったりすると、売却手続きが進まないこともあります。

「境界が不明な土地」は、買う側にとって大きなリスクになるため、購入を避けられるケースが多いのです。

元気なうちに境界杭の確認や測量を行っておくことが、将来のトラブル防止につながります。

4.借地権・底地など権利関係が複雑

借地権や底地は、相続時に注意が必要な不動産の代表例です。

例えば、
・他人の土地を借りて建物を建てている
・自分の土地を他人に貸している
このような不動産は、権利関係が複雑なため、一般的な土地よりも売却しにくい傾向があります。

相続税評価では一定の評価がされていても、市場で売却する際には思った以上に価格が下がることも珍しくありません。

権利が複数に分かれている不動産は、自由に利用・売却できないため、購入希望者が限られてしまうのです。

生前から権利関係を整理できるかどうか、専門家へ相談しておくことが大切です。

5.賃貸不動産

アパートや賃貸住宅を所有している場合も注意が必要です。

一見すると家賃収入があるため資産に見えますが、老朽化が進むと状況は変わります。

例えば、
・家賃が低くなっている
・修繕費が増えている
・空室が増えている
・買い手がローンを利用しにくい
といった問題が重なることがあります。

収益不動産は、土地の価格だけでなく「どれだけ家賃収入を生み出せるか」で評価されます。

築年数が古く、収益性が低い物件ほど価格は下がりやすく、売却も難しくなります。

さらに、金融機関の融資が受けにくくなることで購入希望者が減り、結果として売却しづらい不動産となってしまいます。

買い手が「買いやすい不動産」は売りやすい

不動産は、「今いくらで売れるのか」という視点だけでなく、「買う人が購入しやすいか」という視点も非常に重要です。

例えば、収益不動産の場合、購入を希望する人の多くは金融機関の融資を利用します。しかし、建物が老朽化していると融資審査が厳しくなり、買いたいと思っていてもローンが組めず購入を断念するケースがあります。

特に木造アパートや古い賃貸住宅は、建物の築年数が大きなポイントになります。築年数が古くなるほど金融機関が融資期間を短く設定したり、場合によっては融資そのものが難しくなったりすることもあります。

つまり、買い手にとって資金調達が難しい不動産は、それだけ購入希望者が少なくなるということです。

また、収益不動産は一般住宅とは価格の決まり方も異なります。自宅用の住宅は土地の相場や建物の状態を基準に価格が決まることが多い一方、アパートや賃貸マンションは「年間でどれだけ家賃収入を得られるか」という収益性が重視されます。

家賃が低く、空室が多く、さらに修繕費がかかる物件では、購入後の収益が期待できません。そのため、市場価格よりも大幅に安くなければ売れないケースも珍しくありません。

不動産は「持っているだけで価値がある」のではなく、「欲しいと思う人がいて、購入しやすい状態であること」が資産としての価値につながります。裏を返せば、買いやすい不動産ほど売りやすく、買いにくい不動産ほど売りにくいということを理解しておくことが大切です。

「相続放棄すればいい」は大きな誤解

「売れない実家なら相続放棄すればいい」と考える方もいます。

しかし、相続放棄は不動産だけを放棄する制度ではありません。

預貯金などのプラスの財産だけ受け取り、不動産だけ放棄するということはできません。

相続放棄を選択する場合は、すべての財産を放棄することになります。

また、近年は相続土地国庫帰属制度も始まりましたが、利用には厳しい条件が設けられており、実際には簡単に利用できる制度とは言えません。

そのため、「相続してから考える」のではなく、「相続前に整理しておく」という考え方が非常に重要になります。

将来困らないために生前からできること

実家を負債にしないためには、親が元気なうちから準備を始めることが大切です。

特に確認しておきたいポイントは次のとおりです。
・実家のある地域の人口動向を確認する
・高低差や立地条件を把握する
・境界杭や測量の状況を確認する
・借地権・底地など権利関係を整理する
・老朽化した賃貸不動産は早めに見直す
これらは相続が始まってからでは対応が難しいものも多く、生前だからこそスムーズに進められるケースがあります。

不安な点がある場合は、早めに不動産や相続に詳しい専門家へ相談することが安心につながります。

まとめ

実家は必ずしも資産になるとは限らず、立地や権利関係、建物の状態によっては「負債」となってしまう可能性があります。特に人口減少エリア、高低差のある土地、境界問題、借地権、老朽化した収益不動産は、売却が難しくなる代表的なケースです。相続放棄や国庫帰属制度だけで解決できるとは限らないため、最も重要なのは「親が元気なうちに準備すること」です。将来の相続で家族が困らないよう、実家の状況を一度見直し、必要に応じて専門家へ相談しながら早めに対策を進めておきましょう。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。