不動産売却の相談から販売開始までの流れを徹底解説|失敗しないための事前準備
はじめに
不動産の売却は、多くの方にとって人生で何度も経験するものではありません。そのため、「何から始めればいいの?」「査定を依頼すればすぐ売り出すの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
実際には、売却を成功させるためには販売開始までにいくつもの重要なステップがあります。この記事では、不動産売却の相談から販売開始までの流れを順番に解説し、それぞれの段階で押さえておきたいポイントをご紹介します。
不動産売却は相談からスタートする
不動産売却は、「売る」と決めてから始める必要はありません。
・売却した方がいいのか
・賃貸に出した方がいいのか
・まだ迷っている
このような漠然とした状態でも相談することができます。
実際、最初の相談では結論を出すことよりも、「現在どのような状況にあるのか」を整理することが重要です。
例えば、
・なぜ売却を考えているのか
・現在の住まいの状況
・住宅ローンは残っているのか
・いつまでに売りたいのか
などを確認しながら、最適な進め方を一緒に考えていきます。
相談の段階で状況を整理することで、「売却」「賃貸」「保有継続」など複数の選択肢を比較できるようになります。
まずは不動産の調査を行う
相談内容を整理した後は、不動産の調査を進めます。
調査には大きく分けて3種類あります。
役所調査
法令上の制限や道路状況などを確認する調査です。
建築基準法や都市計画法など、売却時に重要となる情報を確認します。
現地調査
実際に現地へ足を運び、
・建物の状態
・接道状況
・周辺環境
・境界
などを確認します。
マーケット調査
現在の市場でどの程度の価格で売れそうかを調査します。
初期段階では、このマーケット調査が中心となるケースが多く、近隣の成約事例や販売事例を参考に、おおよその売却価格を把握していきます。
査定価格はどのように決まるのか
不動産査定は、単純な「相場」だけで決まるものではありません。
住宅の場合は、近隣で実際に売買された類似物件と比較して査定を行います。
例えば、
・土地の広さ
・築年数
・日当たり
・接道状況
・高低差
・建物の状態
などを一つひとつ比較し、価格を補正していきます。
不動産は一つとして同じものが存在しないため、過去の取引事例をもとに価格を推定する「取引事例比較法」が一般的です。
投資用不動産は収益性も重視される
アパートや投資用マンションなどの場合は、収益性も重要な査定要素になります。
例えば、
・年間家賃収入
・利回り
・将来の収益
などをもとに価格を算出する「収益還元法」が採用されることがあります。
居住用と投資用では査定方法が異なるため、物件の種類に応じた評価が必要になります。
売却前に確認しておくべきポイント
査定とあわせて重要なのが、売却時に支障となる要素がないか確認することです。
代表的なのは住宅ローンです。
売却価格で住宅ローンを完済できるのかを事前に確認しておかなければなりません。
また、税金の滞納がある場合も注意が必要です。
滞納が続くと、不動産に差押えが入る可能性があります。
「分割払いをしているから安心」というわけではなく、状況によっては差押えの対象になることもあるため、早めに専門家へ相談することが大切です。
不動産を商品化するか、そのまま売るか
査定後には、売却方法について具体的な打ち合わせを行います。
中古住宅では、
・壁の傷
・設備の故障
・建物の傾き
・越境
・私道の問題
など、何らかの課題が見つかることがあります。
この場合、
・修繕してから販売する
・現状のまま販売する
という2つの選択肢があります。
いわば「商品化して売る」のか、「現状のまま売る」のかを判断するわけです。
どちらが正解ということではなく、費用や時間、売却価格とのバランスを考えながら最適な方法を選びます。
買主には3つのタイプがある
不動産の買主は、大きく分けると次の3種類です。
自分で住む人
一般の住宅購入者や事業用として利用する方です。
比較的高く売れる可能性がありますが、建物の状態や立地条件などが重視されます。
不動産投資家
家賃収入を目的として購入する方です。
収益性を重視するため、利回りや賃貸需要が重要になります。
不動産会社
リフォームや再販売を目的として購入します。
現状のままでも買い取ってもらえるケースがありますが、市場価格より低めになることもあります。
売却価格だけではなく、「いつまでに売りたいか」「修繕費をかけられるか」といった事情も踏まえて、どの買主をターゲットにするかを決めていきます。
媒介契約を締結して販売準備へ
売却方法が決まったら、不動産会社と媒介契約を締結します。
媒介契約とは、売却活動を正式に依頼する契約です。
契約書には、
・販売価格
・仲介手数料
・契約期間
・販売方法
などが記載されます。
なお、不動産会社によっては直接買い取るケースもありますが、多くの場合は市場に公開して購入希望者を募集する形になります。
また、通常の仲介では「売却が成立した際」に仲介手数料が発生します。
一方で、売却ではなく土地活用や市場調査などを依頼する場合は、不動産コンサルティングとして別途費用が発生するケースもあります。
事前に費用の説明を受けたうえで進めることが大切です。
売却方法は状況によって最適解が異なる
売却活動を始める前には、「どのような方法で売却するか」を依頼者と十分に打ち合わせます。不動産売却には唯一の正解があるわけではなく、置かれている状況によって最適な方法は変わります。
例えば、「少しでも高く売りたい」という希望がある一方で、「できるだけ早く現金化したい」という事情を抱えている方もいます。また、売却前にリフォームや修繕へ費用をかけられる方もいれば、できるだけ費用をかけずに現状のまま売却したいというケースもあります。
このように、売却価格・売却スピード・事前にかけられる費用のバランスを考えながら販売戦略を決めていくことが重要です。
さらに、地域によって市場の動きも異なります。同じような物件であっても、需要が高いエリアでは短期間で売れることもあれば、購入希望者が限られる地域では販売期間が長くなることもあります。そのため、全国のマーケットデータや地域特性を踏まえた販売計画を立てることが、納得のいく売却につながります。
専門家は物件そのものだけを見るのではなく、依頼者の事情や市場環境も含めて総合的に判断し、複数の売却プランを提案します。その中からメリット・デメリットを比較し、ご自身にとって最も納得できる方法を選択することが、後悔しない不動産売却への第一歩といえるでしょう。
販売開始とレインズへの登録
媒介契約を締結すると、いよいよ販売開始です。
販売開始とは、インターネットなどを通じて一般の購入希望者が物件情報を閲覧できる状態になることを指します。
また、媒介契約の種類によっては、不動産会社には一定期間内に「レインズ(不動産流通標準情報システム)」へ登録する義務があります。
レインズへ登録されることで、全国の不動産会社が物件情報を共有でき、より多くの購入希望者へ情報を届けることが可能になります。
登録後には登録証明書が発行され、依頼者へ交付されます。
まとめ
不動産売却は、「査定をしてすぐ販売する」という単純な流れではありません。まずは現在の状況を整理し、調査や査定を通じて物件の価値や課題を把握したうえで、どのような方法で売却するかを検討することが重要です。
また、買主の種類や販売方法によって売却価格や売れるまでの期間は大きく変わります。一括査定の価格だけを鵜呑みにするのではなく、ご自身の事情や希望を踏まえた売却戦略を立てることが成功への近道です。正しい順序で準備を進めることで、無駄な時間やコストを抑えながら、納得のいく不動産売却を実現できるでしょう。
この記事を書いた人

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宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。
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