火災保険請求サポート会社は利用して大丈夫?宅建士がリスクと注意点を徹底解説

近年、「火災保険を使えば100万円以上受け取れる」「保険金請求を無料でサポートします」といった広告を目にする機会が増えました。しかし、そのような火災保険請求サポート会社を安易に利用すると、高額な手数料や将来的なトラブルにつながる可能性があります。

今回は宅建士の視点から、火災保険請求サポート会社の仕組みや問題点、本当に利用すべきなのかについて分かりやすく解説します。

火災保険請求サポート会社とは?

火災保険請求サポート会社とは、戸建住宅などの火災保険請求をサポートする会社です。

「加入している火災保険を活用すれば保険金が受け取れます」と提案し、建物の調査や見積書の作成などを行います。

ただし、保険金請求を代理で行うことは法律上認められていません。

そのため、多くの会社では、
・建物調査
・見積書作成
・必要書類の作成サポート
までを行い、実際の請求は所有者本人が行う仕組みになっています。

一見すると問題ないように思えますが、ここに大きなリスクがあります。

火災保険請求サポート会社が増えている背景

ここ数年、インターネット広告やSNSなどで「火災保険を使って自己負担ゼロで修理できます」「保険金が100万円以上受け取れる可能性があります」といった広告を目にする機会が増えました。その背景には、自然災害の増加によって火災保険を利用する人が増えたことがあります。

確かに、台風や大雪、雹(ひょう)、落雷などによる被害は火災保険の補償対象となるケースが多く、実際に保険金を受け取って修理を行うことは制度として認められています。しかし、その制度を利用して高額な手数料を得ることだけを目的とした請求サポート会社も増えており、社会問題となっています。

保険会社や損害保険業界でもこうした状況を重く受け止め、注意喚起を行っています。広告だけを見ると「保険金がもらえるなら利用した方が得ではないか」と感じるかもしれませんが、実際には契約内容や建物の状況によって保険金が支払われないケースも少なくありません。

結論:基本的には利用をおすすめしません

私自身は、火災保険請求サポート会社への依頼は基本的におすすめしていません。

もちろん、すべての会社が悪質とは言いません。

しかし、
・手数料が非常に高い
・保険請求に関する責任は所有者本人
・将来の不動産売却にも影響する
といった理由から、慎重に判断する必要があります。

高額すぎる成功報酬

手数料は30〜45%が一般的

多くの請求サポート会社では、成功報酬制を採用しています。

例えば保険金が100万円支払われた場合、
・手数料30%なら30万円
・手数料45%なら45万円
がサポート会社の報酬になります。

つまり、受け取れる保険金のかなりの部分が手数料として差し引かれてしまいます。

サービス内容に対して高額

もちろん専門的な知識への対価は必要です。

しかし、
・建物調査
・写真撮影
・見積書作成
という業務内容を考えると、30〜45%という報酬はかなり高額と言わざるを得ません。

仮に100万円の修理が必要だった場合でも、手元に55〜70万円しか残らなければ、本来必要な修理費用が不足してしまいます。

事実と異なる保険請求になるリスク

火災保険は老朽化を補償するものではない

火災保険が対象となるのは、
・台風
・強風
・雹(ひょう)
・落雷
・突発的な事故
などによる損害です。

一方、
・経年劣化
・老朽化
・通常の摩耗
は保険対象外になります。

不適切な請求になる可能性

一部の請求サポート会社では、
「これは台風による損傷だったことにしましょう」
というような形で書類を作成するケースも指摘されています。

もし事実と異なる内容で保険請求を行えば、問題となる可能性があります。

責任を負うのは所有者本人

ここで非常に重要なのが責任の所在です。

書類を作成するのはサポート会社ですが、実際に保険会社へ請求するのは建物所有者本人です。

つまり、
「虚偽の内容で請求した」
と判断された場合、責任を問われるのは所有者になります。

サポート会社が責任を負ってくれるとは限りません。

この点は十分理解しておく必要があります。

保険金を受け取っても修理しないリスク

「修理しなくても自由」という営業トーク

請求サポート会社の中には、
「保険金は自由に使えます」
という説明をするところもあります。

しかし、本来火災保険は損傷した建物を復旧するためのお金です。

修理を行わず放置すると、建物には損傷が残ったままになります。

修理費が不足するケースも多い

例えば100万円の修理費が必要でも、
45万円を手数料として支払えば、
残るのは55万円です。

当然、その金額では十分な修理ができないケースもあります。

結果として、損傷を放置した住宅になってしまいます。

将来売却するときの大きなデメリット

告知義務が発生する

将来住宅を売却するときには、
建物に損傷があった事実や修理状況について買主へ説明する義務があります。

つまり、
「保険金は受け取ったが修理していない」
という場合も、基本的には告知対象になります。

売却価格にも影響

買主から見れば、
・修理済みの住宅
・修理されていない住宅
では安心感がまったく違います。

当然、修理されていない住宅は評価が下がり、売却価格にも影響する可能性があります。

再度保険が使えないケースもある

保険金は本来、修理を目的として支払われます。

そのため、
一度保険金を受け取りながら修理をしなかった場合、
その箇所から雨漏りなどの二次被害が発生しても、新たな保険金が支払われない可能性があります。

「修理を前提として支払われた保険金」である以上、放置したことによる損害まで補償されるとは限りません。

最近は「復旧」が条件の保険も増えている

最近では、
修理・復旧を条件とする特約が付いた火災保険も増えています。

背景には、
火災保険を利用した不適切な請求が増加していることがあります。

保険会社としても、本当に必要な修理だけを補償したいという考えから、このような仕組みが広がっています。

結果として、不正請求が減れば、保険制度全体の健全化にもつながります。

建物を所有している方こそ慎重な判断が必要

特に戸建住宅を所有している方や、ご実家が戸建住宅である方、不動産投資として戸建住宅やアパートを所有している方は、このような営業を受ける機会が増えるかもしれません。

しかし、「無料で調査します」「保険金が下りなければ費用はかかりません」という言葉だけで契約してしまうのは危険です。

重要なのは、保険金を受け取ることではなく、建物を適切な状態に維持することです。建物は大切な資産であり、修理を先送りにすると損傷が拡大し、結果的に大規模な修繕が必要になるケースもあります。

また、不動産は将来的に売却や相続をする可能性もあります。修理をしていない建物は資産価値にも影響し、買主や相続人にとってもマイナス要因となる可能性があります。

火災保険は「保険金を受け取る制度」ではなく、「損害を復旧するための制度」です。この本来の目的を理解したうえで利用することが、結果としてご自身の資産を守ることにつながります。

請求サポート会社を利用するかどうかを判断する際は、「本当に建物を直すことが目的になっているのか」「高額な手数料を支払うだけになっていないか」という視点を持つことが大切です。安易な広告に流されるのではなく、信頼できる工務店やリフォーム会社、あるいは加入している保険会社へ直接相談することをおすすめします。

本当に損害があった場合はどうすればいい?

もちろん、本当に台風や自然災害で建物が損傷した場合は、火災保険を請求することは正当な権利です。

その場合は、
・保険会社へ直接相談する
・修理を依頼する工務店やリフォーム会社へ相談する
ことをおすすめします。

最近では、修理を前提として保険請求をサポートしてくれる工務店も増えています。

修理を目的としたサポートであれば、利用を検討する価値は十分あるでしょう。

まとめ

火災保険請求サポート会社のすべてが悪質とは言えません。しかし、高額な成功報酬や虚偽申請のリスク、さらには住宅売却時の告知義務など、多くの注意点があります。

火災保険は本来、建物を元の状態へ戻すための制度です。保険金を受け取ることだけを目的に利用するのではなく、必要な修理を適切に行うことが大切です。

本当に被害を受けた場合は、信頼できる工務店やリフォーム会社、または保険会社へ相談し、安全で適切な方法で手続きを進めることをおすすめします。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。