【宅建士が解説】田舎の山林を手放す方法|売却・贈与・有償引取まで現実的な対処法を徹底解説vol2

はじめに

相続や先祖代々の資産として山林を所有しているものの、「使い道がない」「管理できない」「将来子どもに負担をかけたくない」と悩んでいる方は少なくありません。近年は相続登記の義務化もあり、不要な山林をそのまま放置するリスクが高まっています。本記事では、山林売却時に関係する法律や費用、売れない場合の対処法、さらに所有し続けるリスクについて、不動産実務の視点から詳しく解説します。

山林は自由に使えるわけではない

山林を所有していると、「自分の土地だから自由に使える」と考えがちです。しかし実際にはさまざまな法律による規制が存在します。

前回の記事でも触れましたが、山林の活用や売却を考える際には、事前に法的な制限を確認することが重要です。

森林法による規制

山林には森林法が適用されるケースがあります。

森林法では森林の保全を目的としており、無秩序な開発や伐採を防ぐための規制が設けられています。

そのため、
・勝手に大規模な伐採を行う
・森林を造成する
・用途変更を行う
といった行為には届出や許可が必要になる場合があります。

都市計画法による制限

山林が市街化調整区域にある場合は特に注意が必要です。

市街化調整区域とは、市街地の無秩序な拡大を防ぐために指定された区域です。

原則として建物の建築が制限されるため、
・別荘
・ゲストハウス
・倉庫
・事務所
などを建てることが難しいケースがあります。

購入希望者が現れたとしても、「建物が建てられない土地」であれば利用価値が限定されるため、売却が難しくなることも少なくありません。

建築基準法の接道義務

建築基準法では、建物を建築するためには原則として道路に2メートル以上接している必要があります。

いわゆる「接道義務」です。

山林の場合、
・道路に接していない
・接していても建築基準法上の道路ではない
というケースも珍しくありません。

そのため、
「自分の土地だから物置を建てよう」
「キャンプ場用に管理棟を建てよう」
と考えても、法的に建築できない可能性があります。

売主はすべての利用可能性を調査できない

売却する立場からすると、購入希望者ごとに
・この建物は建てられる
・この用途なら利用できる
という調査をすべて行うことは現実的ではありません。

そのため、不動産会社としては
「市街化調整区域のため原則建築不可」
といった事実を告知したうえで販売活動を行うことになります。

農地法にも注意が必要

山林の中には、実際には山林として利用されていても登記上の地目が
・田
・畑
になっているケースがあります。

この場合は農地法の規制を受けます。

農地は誰でも買えるわけではない

農地を売買する場合には農業委員会の許可が必要です。

さらに、
・農業従事者
・一定の農業資格を持つ人
など、購入者側にも条件が課されることがあります。

つまり一般の方が自由に購入できる土地ではないため、買い手が限定されることになります。

結果として売却難易度が高くなるのです。

国土利用計画法の対象になる場合もある

山林が大規模な土地である場合には、国土利用計画法による規制も考慮しなければなりません。

一定面積以上の土地取引では、
・利用目的
・売買価格
・契約内容
などについて届出が必要になるケースがあります。

一般的な個人所有の山林では該当しない場合もありますが、大規模な土地の場合は事前確認が必要です。

山林売却で発生する主な費用

山林を売却する際には、いくつかの費用が発生する可能性があります。

ただし、一般的な住宅地や宅地の売却とは事情が異なります。

測量費用

山林売却サイトなどを見ると、測量費用が必要と説明されていることがあります。

しかし実務上は、山林の測量を行わずに売却するケースも少なくありません。

なぜなら、
・面積が広い
・境界確認が困難
・山中で作業が大変
という事情があるからです。

さらに問題なのは、測量費用をかけても土地価格以上の費用が発生することがある点です。

例えば、
・測量費用50万円
・土地価格10万円
という状況では完全な赤字になります。

そのため山林売買では、おおよその範囲を前提に取引されることも珍しくありません。

仲介手数料

山林売却で最も一般的に発生する費用が仲介手数料です。

山林専門業者の多くは仲介形式を採用しています。

一方で買取業者は非常に少ないのが現状です。

その理由は単純で、転売による利益が見込みにくいためです。

買取後に利益を出せる可能性が低いため、多くの業者が仕入れを敬遠しています。

仲介手数料の上限

売買価格が400万円を超える場合、仲介手数料の法定上限は
売買価格×3%+6万円+消費税
となります。

売却を依頼する前に、手数料体系を確認しておくことが重要です。

ドローン撮影費用

最近ではドローンを利用した空撮サービスを提供する業者もあります。

上空から撮影することで、
・地形
・樹木の状況
・接道状況
などを把握しやすくなります。

ただし、必ずしもすべての案件で必要になるわけではありません。

費用対効果を十分に検討することが大切です。

樹木調査費用

山林によっては
・桧
・杉
・ヒバ
など、どのような樹木が生えているかを調査する場合があります。

林業目的で購入を検討する人にとっては、
・樹種
・本数
・樹齢
が重要な判断材料になるためです。

ただし、一般的な山林売却では必須ではないケースも多いでしょう。

広告掲載費用には注意

一部の業者では広告掲載費用を請求するケースがあります。

しかし通常の不動産仲介では、広告活動は仲介手数料に含まれると考えるのが一般的です。

売主が特別な広告を希望した場合は別ですが、
・最初から広告費を請求される
・内容が不明確
という場合には十分な説明を求めることをおすすめします。

山林を手放すための現実的なステップ

では実際に山林を手放したい場合、どのような順番で進めればよいのでしょうか。

①現状を把握する

まずは所有している山林の状況を確認しましょう。

確認したい項目は以下のとおりです。
・所在地
・面積
・地目
・接道状況
・法的規制
・固定資産税

現状が分からなければ売却もできません。

②価格を付けて売却活動を行う

最初に試すべきなのは通常の売却です。

少額でも価格を付けて市場に出してみます。

想定外の需要が見つかることもあります。

例えば、
・キャンプ利用
・林業利用
・太陽光発電関連
・資材置場
などの用途で購入希望者が現れる可能性があります。

③無償譲渡を検討する

売却できない場合は、無償で引き取ってくれる人を探します。

いわゆる贈与です。

近隣地主や親族などが候補になります。

お金にならなくても、将来の負担を考えれば有力な選択肢です。

④有償で引き取ってもらう

それでも引き取り手が見つからない場合は、有償引取を検討します。

これは処分費用を支払って引き取ってもらう方法です。

不動産を粗大ごみに例えるのは適切ではないかもしれませんが、考え方としては近い部分があります。

誰も欲しがらない土地であれば、
「お金を払ってでも手放す」
という選択肢も現実的に検討する必要があります。

相続登記義務化で放置はできない時代へ

近年大きな制度変更として相続登記の義務化があります。

以前は相続した土地を放置しても大きな問題にならないケースがありました。

しかし現在は事情が異なります。

相続登記には費用がかかる

相続登記を行うためには、
・登録免許税
・司法書士報酬
などの費用が発生します。

さらに相続税申告が必要な場合には税理士費用もかかります。

土地が収益を生まなくても費用は発生する

問題なのは、
「全く使い道がない土地」
であっても手続き費用が発生することです。

収益を生まない資産に対して、継続的にお金がかかる状況になります。

子ども世代への負担になる

不要な山林をそのまま相続させると、
・登記費用
・管理費用
・税金
・売却手続き
などの負担が次世代へ引き継がれます。

そのため、所有者が元気なうちに処分方法を検討することが重要です。

山林を放置するリスク

「売れないなら持ち続ければいい」
と考える方もいます。

しかし放置にはさまざまなリスクがあります。

土砂崩れ・崖崩れのリスク

山林は適切な管理が必要です。

管理を怠ると、
・樹木の老朽化
・保水力の低下
・地盤の弱体化
などが発生します。

その結果、大雨などで土砂崩れが起きる可能性があります。

場合によっては所有者責任を問われることもあります。

定期的な伐採・間伐が必要

森林を健全に維持するためには間伐が必要です。

木をすべて伐採するのではなく、適度に間引きを行うことで森林環境を維持します。

しかしそのためには費用と手間がかかります。

不法投棄のリスク

近年増加している問題の一つが不法投棄です。

廃棄物処理費用が高額化しているため、人目につかない山林は不法投棄の標的になりやすくなっています。

特に遠方に住んでいる所有者の場合、
・いつの間にかゴミが捨てられていた
・発見が遅れた
というケースもあります。

放置された廃棄物の処理を求められる可能性もあるため注意が必要です。

個人間売買は慎重に行うべき

山林売買では個人間で直接取引するケースもあります。

しかし、
・法律の確認
・契約書作成
・境界問題
・所有権移転
など専門知識が必要です。

トラブルを避けるためにも、不動産会社や専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

山林は売却自体は可能ですが、宅地と比べると買い手が限られ、思うような価格で売れないケースが多くあります。また森林法や都市計画法、農地法など複数の法律が関係するため、安易な個人間売買はリスクが伴います。まずは現状を把握し、市場での売却を試みることが重要です。それでも売れない場合は無償譲渡、有償引取という選択肢も検討する必要があります。相続登記義務化により「放置しておけばよい」という時代ではなくなりました。将来の管理負担や相続人への影響も踏まえ、早めに対策を進めることが大切です。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。