借地の実家はどう売る?宅建士が解説する「失敗しない売却方法4選」
借地の実家はどう売る?知っておきたい売却方法4選と相続前の対策
はじめに
「実家が借地なので売却できるのか不安」「相続した借地権をどうすればいいかわからない」と悩まれている方は少なくありません。
借地権は通常の不動産売買と異なり、地主との関係や承諾料、更新料など独特のルールがあります。そのため取り扱いを苦手とする不動産会社も多く、売却が難しいと感じる方も多いでしょう。
しかし、借地権には適切な出口戦略があります。この記事では借地権の基本から、借地の実家を売却する4つの方法、それぞれのメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
そもそも借地権とは?
借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有するための権利です。
簡単に言えば、
・土地は地主の所有
・建物は借地人の所有
という状態です。
借地人は地主の承諾を得て土地を借り、その上に住宅や建物を建てています。
借地権のメリット
借地権の最大のメリットは、土地を購入しなくても住宅を所有できることです。
土地代が不要なため、比較的少ない資金でマイホームを取得できるという利点があります。
借地権のデメリット
一方で、借地権にはさまざまな負担があります。
主なものは次のとおりです。
・地代(賃料)の支払い
・更新料の支払い
・建替承諾料の支払い
・譲渡承諾料の支払い
特に更新料や承諾料は高額になるケースが多く、数百万円単位になることも珍しくありません。
借地権で発生する主な費用
地代
借地人は地主に対して地代を支払います。
毎月払いの場合もあれば、年払いの場合もあります。
土地を借りている以上、この支払いは継続的に発生します。
更新料
旧借地法の契約では20年ごとの更新が一般的です。
更新時には地主へ更新料を支払うことが多く、金額は土地の価値によって大きく変わります。
都市部では数百万円になるケースもあります。
建替承諾料
建物が老朽化し、建替えを行う場合には地主の承諾が必要になります。
その際に支払うのが建替承諾料です。
譲渡承諾料
借地権を第三者へ売却する場合も地主の承諾が必要です。
このときに支払う費用が譲渡承諾料になります。
なぜ借地権は相続で不利になりやすいのか?
借地権の問題は、実は相続時により大きく表面化します。
その理由は「相続税評価」と「実際の売却価格」に大きな差があるためです。
相続税評価では高く評価される
国税庁の路線価には借地権割合が設定されています。
一般的な住宅地では、
・借地権:60%
・底地権:40%
という割合が多く見られます。
つまり土地全体の評価額が1億円であれば、
・借地権評価:6,000万円
・底地評価:4,000万円
として評価されます。
相続税の計算上は、この割合で資産価値が認められるのです。
しかし実際の売却価格は大きく下がる
問題はここからです。
相続税評価では60%の価値があるとされる借地権ですが、市場で売却すると必ずしもその価格にはなりません。
借地権の時価は30〜40%程度になることも
借地権は、
・地主の承諾が必要
・承諾料が発生する
・買い手が限定される
などの理由から、実際の市場価値は低くなりがちです。
結果として、土地価格の30〜40%程度でしか売れないケースも珍しくありません。
底地はさらに売りにくい
地主が持つ底地も同様です。
借地人が住み続けている状態では自由に活用できません。
そのため市場価値は10〜20%程度になることもあります。
借地権は「合体して初めて価値が最大化する」
借地権と底地の関係は、よく「合体ロボ」に例えられます。
借地権だけでは完全な不動産ではありません。
底地だけでも自由な土地ではありません。
しかし、
・借地権
・底地権
が一体になることで初めて完全所有権となり、本来の価値を発揮します。
つまり借地人と地主が協力できるかどうかが、不動産価値を最大化する重要なポイントなのです。
借地をそのまま返すのは絶対に避けたい
借地を整理したいと考えたとき、
「地主に返せばいいのでは?」
と思う方もいます。
しかし、これは非常に注意が必要です。
借地権は財産である
借地権は法律上の権利です。
つまり財産です。
価値のある権利を無償で返還することは、大きな損失になる可能性があります。
場合によっては数百万円から数千万円相当の価値を手放してしまうこともあります。
そのため、借地権を整理する際には必ず専門家へ相談することをおすすめします。
借地の実家を売る方法4選
ここからは具体的な売却方法を見ていきましょう。
方法① 借地人が底地を買い取る
最も理想的な方法のひとつです。
借地人が地主から土地を購入し、
・土地
・建物
を完全所有にします。
メリット
・所有権不動産になる
・売却しやすくなる
・資産価値が上がる
デメリット
最大の課題は資金調達です。
土地購入資金が必要になるため、
・高齢でローンが組めない
・手元資金が不足している
というケースでは実現が難しくなります。
方法② 地主が借地権を買い取る
地主が借地権を買い取り、土地を完全所有にする方法です。
理論上は非常に合理的な方法ですが、実際にはあまり行われていません。
地主が反対しやすい理由
地主からすると、
「なぜ自分の土地の上にある権利を買い取らなければならないのか」
という心理が働くことがあります。
そのため実務上は成立件数が非常に少ない方法です。
方法③ 地主と借地人が一緒に第三者へ売却する
もっともおすすめできる方法です。
地主と借地人が協力し、
土地と建物をセットで第三者へ売却します。
なぜ価値が最大化するのか?
所有権として売却できるためです。
購入希望者から見れば、
・借地ではない
・地代が不要
・地主との交渉も不要
となり、購入しやすくなります。
借地人のメリット
・譲渡承諾料が不要になることが多い
・売却価格が高くなる
・買い手が見つかりやすい
地主のメリット
地主側も単独で底地を売るより高く売却できます。
通常10〜20%程度の価値しかつきにくい底地が、本来の40%相当の評価を受けやすくなるからです。
実現のポイント
地主の協力が必要です。
特に周辺に土地を多く所有している地主は反対することもあります。
一方で、他に土地を持っていない地主は協力的なケースもあります。
方法④ 借地権だけを第三者へ売却する
実際に最も多く行われている方法です。
地主の協力が得られない場合でも実行可能です。
地主の承諾が必要
借地権売却では通常、
・譲渡承諾
・承諾料の支払い
が必要になります。
承諾料が争点になりやすい
売却時には、
「承諾料をいくらにするのか」
という点で交渉になることが少なくありません。
そのため、
・不動産会社
・不動産鑑定士
・弁護士
などの専門家が関与するケースもあります。
地主が承諾しない場合はどうなる?
「売却したいのに地主が承諾してくれない」
というケースもあります。
実は、この場合にも救済手段があります。
裁判所の許可制度
正当な理由なく地主が承諾しない場合、
裁判所へ申し立てを行い、許可を得て売却できる可能性があります。
これを借地非訟手続と呼びます。
地主の反対があるからといって、必ずしも売却できなくなるわけではありません。
借地の実家は早めに対策するべき理由
借地権は放置していても状況が良くなることはほとんどありません。
むしろ、
・建物の老朽化
・相続人の高齢化
・更新料の発生
・承諾料の発生
など、時間が経つほど問題が複雑化するケースが多くあります。
また相続が発生すると、
・相続人同士の意見対立
・売却判断の遅れ
・税負担の増加
なども起こりやすくなります。
そのため、借地の実家については元気なうちから出口戦略を考えておくことが重要です。
まとめ
借地権付きの実家は、通常の不動産よりも売却や相続が複雑になりやすい財産です。特に相続税評価額と実際の売却価格に大きな差が生じるため、何も対策をしないまま相続を迎えると損をしてしまう可能性があります。
借地の売却方法には「底地を買い取る」「地主に買い取ってもらう」「地主と共同で売却する」「借地権のみを売却する」という4つの選択肢があります。その中でも、地主と借地人が協力して第三者へ売却する方法は、双方にとって利益を最大化しやすい理想的な形です。
借地権の問題は早めに動くほど選択肢が増えます。実家の借地権について不安がある場合は、借地権に詳しい不動産会社や専門家へ相談し、最適な出口戦略を検討することをおすすめします。
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