誰に売るかで不動産売却は大きく変わる!価格・売りやすさ・スピードの違いを宅建士が解説

はじめに

不動産売却を検討している方の多くは、「少しでも高く売りたい」「できるだけ早く売りたい」と考えるでしょう。しかし、不動産売却では単純に価格だけを考えればよいわけではありません。実は、誰に売るかによって、売却価格・売却までの期間・求められる物件の状態が大きく変わるのです。

本記事では、不動産売却における代表的な買主である「一般消費者」「投資家」「不動産会社」の違いを詳しく解説します。これから売却を検討している方はもちろん、なかなか売れずに悩んでいる方、不動産売却業務に携わる成年後見人や信託受託者、相続財産管理人、破産管財人の方にも参考になる内容です。

不動産の買主は大きく3種類

不動産を購入する人は、大きく分けると次の3種類です。
・一般消費者
・投資家
・不動産会社

実は不動産の買主は、この3つにほぼ集約されます。

別の言い方をすると、
・自分で使う人
・人に貸す人
・転売する人
という分類になります。

それぞれ不動産を見る視点が異なるため、購入価格や判断基準、契約までのスピードも大きく変わってきます。

誰に売るかで変わるポイント① 売却価格

最も高く売れる可能性が高いのは一般消費者

一般的に最も高値で売却できる可能性が高いのは、一般消費者への売却です。

なぜなら、一般消費者は「自分が住む家」として購入するためです。

不動産価格は多くの場合、周辺の成約事例を参考にして決まります。

例えば、
・近所の家が3,000万円で売れた
・土地の広さが似ている
・駅からの距離も近い
という条件であれば、同程度の価格で売れる可能性が高いと判断されます。

このような価格の考え方を「取引事例比較法」と呼びます。

一般消費者は将来的な転売利益や利回りだけではなく、住環境や利便性、学区、日当たりなど様々な要素を総合的に評価して購入するため、比較的高い価格での売却が期待できます。

投資家は収益性を重視する

投資家は不動産を「収益を生み出す資産」として見ています。

そのため、購入判断の基準は家賃収入と利回りです。

例えば、
・購入価格:1,000万円
・年間家賃収入:60万円
の場合、
60万円 ÷ 1,000万円 = 利回り6%
となります。

投資家は「利回り8%以上欲しい」「10%以上なら購入したい」といった基準を持っていることが多く、その基準から逆算して購入価格を決定します。

つまり、一般消費者よりも収益計算が優先されるため、価格はやや低くなる傾向があります。

不動産会社は利益から逆算する

不動産会社が購入する目的は転売です。

購入後に、
・リフォームする
・建物を解体する
・新築を建てる
・商品化して再販売する
といった流れで利益を生み出します。

そのため、
販売価格 − 工事費 − 諸経費 − 利益
という計算で仕入価格を決定します。

当然ながら利益を確保する必要があるため、一般消費者向け売却より価格は低くなります。

ただし、不動産会社同士の競争や相場予測の違いによっては、想定以上の高値で買い取ってくれるケースもあります。

そのため、売却活動では複数の不動産会社に情報を届けることも重要になります。

誰に売るかで変わるポイント② 物件の状態

一般消費者は「そのまま住める状態」を好む

一般消費者は、自分が住むための住宅を探しています。

そのため、
・室内がきれい
・清掃が行き届いている
・修繕状態が良い
といった物件ほど売れやすくなります。

もちろん築年数が古くても売れますが、第一印象の良し悪しは非常に重要です。

購入希望者が内覧した際に、
「すぐ住めそう」
と思える状態であるほど成約率は高くなります。

投資家は修繕費込みで判断する

投資家は物件の状態そのものよりも、
「直したらいくらかかるか」
を重視します。

例えば、
・クロス張替え
・水回り交換
・外壁補修
などが必要でも、その費用を加味して収益が見込めれば購入対象になります。

そのため、多少状態が悪くても検討してもらえる可能性があります。

不動産会社は状態が悪くても購入する

不動産会社はさらに柔軟です。

極端な例でいえば、
・雨漏りしている
・建物が傾いている
・長年放置されている
といった物件でも購入対象になります。

なぜなら、修繕や建替えによって商品化することを前提としているからです。

もちろん、修繕費用やリスクは価格に反映されますが、「状態が悪いから売れない」ということはありません。

中古住宅はリフォームしないと売れないのか?

不動産売却を検討している方から非常によく聞かれる質問があります。

それが、
「リフォームしてから売った方がいいですか?」
というものです。

結論から言えば、多くの場合はリフォームせずに売却しています。

理由① リフォーム費用が高額

リフォームは想像以上に費用がかかります。

少し手を入れるだけでも、
・100万円
・200万円
程度はすぐに必要になります。

売れるかどうか分からない段階で先に大きな費用をかけることに抵抗を感じる方は少なくありません。

理由② 買主の好みに合うとは限らない

売主が良いと思って実施したリフォームが、買主に評価されるとは限りません。

例えば、
・フローリングの色
・キッチンのデザイン
・壁紙の柄
などは好みが分かれます。

せっかく費用をかけても、買主が購入後に再度リフォームしてしまうケースもあります。

理由③ 住みながらのリフォームは難しい

多くの売主は住みながら売却活動を行います。

そのため、
・家具を移動する
・工事期間中の生活
・騒音や粉塵
などの問題が発生します。

現実的には住みながら大規模リフォームを行うのは容易ではありません。

リフォームよりも重要なこと

実際には、
・不要品の整理
・清掃
・換気
・明るい室内演出
といった工夫の方が効果的な場合も多くあります。

必ずしもリフォームが必要というわけではなく、物件や市場状況に応じて判断することが重要です。

誰に売るかで変わるポイント③ 意思決定のスピード

一般消費者は慎重に判断する

一般消費者は人生で何度も不動産を購入するわけではありません。

多くの方にとって住宅購入は人生最大級の買い物です。

そのため、
・家族で相談
・親への相談
・住宅ローン審査
・将来設計の確認
など、多くの検討プロセスがあります。

内覧後すぐに購入を決めるケースもありますが、数週間から数か月かけて検討することも珍しくありません。

不動産会社

不動産会社は数字で判断します。

例えば、
・いくらで仕入れるか
・工事費はいくらか
・いくらで売れるか
・利益はいくら残るか
が明確になれば、比較的短期間で購入判断を下します。

場合によっては数日以内に契約まで進むこともあります。

投資家はその中間

投資家は収益計算を行うため、一般消費者よりは早く、不動産会社よりは慎重な傾向があります。

家賃相場や修繕費、空室リスクなどを確認しながら判断するため、スピード感としては中間的な存在といえるでしょう。

売主の状況によって最適な売却先は変わる

高く売りたいなら一般消費者

売却価格を最優先するなら、一般消費者向け販売が有力です。

ただし、
・内覧対応が必要
・売却期間が長くなる可能性
・物件状態の影響を受けやすい
という特徴があります。

売却後も住み続けたいなら投資家

家を手放したいけれど引っ越したくない。

そんな方には投資家向け売却という選択肢があります。


代表的なのが「リースバック」です。

リースバックとは、
・自宅を売却する
・買主から借りる
・そのまま住み続ける
という仕組みです。

資金調達をしながら住み慣れた家で生活を続けられるため、近年利用が増えています。

早く売りたいなら不動産会社

次のようなケースでは、不動産会社への売却が向いています。
・とにかく早く現金化したい
・建物の状態が悪い
・周囲に知られたくない
・内覧対応を避けたい

特に相続物件や空き家、老朽化した住宅では有効な選択肢になります。

また、高級住宅地などでは「売却を近所に知られたくない」という理由で買取を選択するケースもあります。

不動産売却で大切なのは出口戦略

不動産売却には万能な正解はありません。

・高く売りたい
・早く売りたい
・住み続けたい
・秘密にしたい
など、売主ごとに事情や希望は異なります。

そのため重要なのは、
「誰に売るのが最も自分に合っているか」
を見極めることです。

価格だけを追求すると売却期間が長引くことがありますし、スピードだけを重視すると価格が下がることもあります。

それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の状況に合った出口戦略を選ぶことが成功する不動産売却への近道です。

まとめ

不動産売却では、誰に売るかによって価格・物件状態への要求・意思決定のスピードが大きく変わります。一般消費者向けは高値売却が期待できる一方で時間がかかりやすく、投資家向けはリースバックなど柔軟な活用が可能です。不動産会社への売却は価格面では不利になりやすいものの、早期売却や状態の悪い物件にも対応できます。

大切なのは「どの売却方法が一番良いか」ではなく、「自分の状況に最も合う方法は何か」を見極めることです。売却理由や希望条件を整理したうえで、専門家と相談しながら最適な売却先を選択しましょう。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。