離婚した夫婦の共有名義の家を売るには?売却時に会う必要があるのか解説

離婚後も夫婦共有名義の不動産を所有しているケースは少なくありません。しかし、いざ売却しようと考えたときに、「元配偶者と顔を合わせなければならないのでは?」と不安を抱く方も多いのではないでしょうか。

実際、不動産売却では売主が立ち会う場面がありますが、工夫次第では元夫婦が直接会わずに売却を進めることも可能です。本記事では、不動産売却の基本的な流れと、離婚した夫婦が顔を合わせずに売却する方法について詳しく解説します。

離婚後も共有名義の不動産は売却できるのか?

結論から申し上げると、離婚後であっても共有名義の不動産は売却できます。

ただし、不動産が共有名義になっている場合は、共有者全員の同意が必要です。

例えば、
・元夫が持分8/10
・元妻が持分2/10
というケースであっても、不動産全体を売却するためには双方の意思確認と手続きが必要になります。

そのため、離婚後に関係性が悪化している場合には、売却手続きそのものが大きなストレスになることがあります。

不動産売却の基本的な流れ

まずは不動産売却がどのように進むのかを確認しておきましょう。

一般的な流れは次の通りです。

1.販売開始

不動産会社と媒介契約を結び、物件の販売活動を開始します。

2.買主が決まる

購入希望者が現れ、価格や条件がまとまると売買契約へ進みます。

3.売買契約の締結

売主と買主の間で正式な売買契約を締結します。

契約書には以下のような内容が記載されます。
・売買価格
・手付金の額
・引渡日
・契約解除条件
・設備の引継ぎ内容
など、不動産取引に関する重要事項が盛り込まれます。

4.買主の住宅ローン審査

買主が住宅ローンを利用する場合、本審査を受けます。

審査が承認されることで、売買契約が最終的な決済へ向けて進みます。

5.引越し・室内の明け渡し

売主は契約で定められた期日までに荷物を撤去し、物件を空の状態にします。

6.決済・引渡し

最後に決済を行います。

買主から売主へ売買代金が振り込まれ、同時に鍵を引き渡します。

また、このタイミングで所有権移転登記の手続きも行われます。

売主が立ち会う必要がある3つのタイミング

不動産売却では、売主が関与する主な場面が3回あります。

媒介契約の締結

まず、不動産会社へ売却を依頼する際に媒介契約を結びます。

媒介契約とは簡単に言えば、
「この不動産の販売活動をお願いします」
という依頼契約です。

株式売買で例えるなら、
「この株を〇〇円で売ってください」
と証券会社へ依頼するようなイメージです。

媒介契約を結ぶことで、不動産会社は正式に販売活動を開始できます。

売買契約の締結

購入希望者が見つかったら売買契約を締結します。

この場面では、
・契約条件の確認
・売買金額の確認
・引渡日の確認
などを行い、売主・買主双方が署名押印します。

決済・引渡し

売却手続きの最終段階です。

通常は買主が住宅ローンを利用する金融機関で行われます。

参加者は一般的に、
・売主
・買主
・不動産会社
・司法書士
です。

必要書類の確認後、売買代金が振り込まれ、鍵を引き渡します。

室内確認は必ずしも売主が立ち会う必要はない

売却前には買主が室内を最終確認することがあります。

これは、
「契約通りの状態で引き渡されるか」
を確認するためのものです。

ただし、この確認作業は不動産会社が代理で立ち会うことも可能です。

そのため、売主本人が必ず参加しなければならないわけではありません。

手続きはどこで行うのか?

媒介契約・売買契約の場合

媒介契約や売買契約は、
・不動産会社の事務所
・買主側不動産会社の事務所
・会議室
・売主の自宅
などで行われます。

ケースによっては駅近くのカフェやレンタル会議室などで行うこともあります。

重要なのは場所ではなく、契約内容を確認し、署名押印を行うことです。

決済の場合

決済はほとんどの場合、買主が利用する金融機関で行われます。

その場で資金移動が行われるためです。

関係者全員が集まり、必要書類を確認してから振込手続きを行います。

離婚した元夫婦にとって大きな問題とは?

通常の不動産売買であれば、売主が複数人いても大きな問題になることはありません。

しかし、離婚が関係している場合は事情が異なります。

人間関係が悪化しているケースが多い

離婚に至った背景はさまざまですが、少なくとも円満な関係を維持しているケースばかりではありません。

そのため、
・顔を合わせたくない
・会話をしたくない
・同じ空間にいるだけでストレス
という方も少なくありません。

実際の売却現場でも、買主は新居購入に喜びを感じている一方で、元夫婦同士の空気が重くなることがあります。

不動産会社としても、非常に気を遣う場面です。

手続きのたびに顔を合わせる負担

共有名義の不動産売却では、
1.媒介契約
2.売買契約
3.決済
という少なくとも3回の重要な手続きがあります。

そのたびに元配偶者と顔を合わせることに強い精神的負担を感じる方もいます。

なぜ多くの不動産会社は同席を求めるのか?

一般的な不動産会社では、
「共有者全員そろって手続きをしてください」
と案内されることが多いです。

その理由は主に次の3つです。

説明を一度で済ませられる

不動産売買では非常に多くの書類を確認します。

共有者が同席していれば、説明は1回で済みます。

認識のズレを防げる

別々に説明すると、
・聞いた内容が違う
・認識にズレがある
という問題が発生する可能性があります。

同席していれば、その場で確認できます。

手続きがスムーズになる

契約書類や必要事項の確認を一度に行えるため、手続き全体が効率的になります。

そのため、多くの不動産会社は共有者同席を基本としています。

元夫婦が会わずに売却することは可能?

結論としては可能です。

共有名義の不動産であっても、進め方を工夫することで元夫婦が直接顔を合わせずに売却できるケースがあります。

別々に説明を受ける

媒介契約や売買契約について、それぞれ別の日時に説明を受ける方法があります。

個別に署名押印する

契約書への署名押印を別々に行うことも可能です。

手続きを分けて進める

決済についても状況に応じて調整できる場合があります。

ただし、金融機関や取引条件によって対応方法は異なるため、経験豊富な不動産会社へ相談することが重要です。

顔を合わせずに売却するメリット

精神的負担が軽減される

最大のメリットは精神的ストレスの軽減です。

離婚後の関係が悪化している場合、顔を合わせないだけでも大きな安心感があります。

感情的なトラブルを防げる

売却手続き中に感情的な対立が起こると、取引そのものに影響を与える可能性があります。

別々に進めることで冷静な対応がしやすくなります。

売却に集中できる

本来の目的は不動産を適正価格で売却することです。

人間関係の問題を最小限にすることで、売却成功に集中できます。

共有名義の不動産は早めの相談がおすすめ

離婚後も共有名義のまま放置されている不動産は少なくありません。

しかし時間が経過すると、
・再婚
・相続
・転居
・連絡先変更
などによって状況がさらに複雑化する可能性があります。

共有者同士の連絡が取りづらくなると、売却そのものが困難になるケースもあります。

そのため、
「いつか売ろう」
ではなく、
「売却を考え始めた段階」
で専門家へ相談することが重要です。

まとめ

離婚後も共有名義の不動産は売却できますが、売却手続きには共有者全員の協力が必要です。一般的には媒介契約・売買契約・決済の3つの場面で売主が立ち会うため、元夫婦が顔を合わせるケースが少なくありません。

しかし、離婚後の関係性によっては大きな精神的負担になることもあります。そのような場合でも、経験豊富な不動産会社へ相談することで、元夫婦が直接会わずに売却を進められる可能性があります。共有名義の不動産は時間が経つほど問題が複雑化しやすいため、再婚や相続などの事情が発生する前に、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

代表取締役士杉山善昭
代表取締役士杉山善昭
宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。