急傾斜地がある土地の査定額はどれくらい下がる?評価の仕組みと擁壁の注意点を宅建士が解説
急傾斜地がある土地の査定額はどれくらい下がる?評価の仕組みと擁壁の注意点を宅建士が解説
不動産を売却する際、「土地の一部が斜面になっている」「隣地との高低差が大きい」といった理由で査定額がどの程度変わるのか気になる方は多いのではないでしょうか。
傾斜地や崖地を含む土地は、一般的な平坦地と比べて利用価値が低く評価されることが多く、査定額にも影響を与えます。しかし、単純に「傾斜地だから安い」とは言い切れません。擁壁の有無や種類、斜面の向き、眺望などによって評価は大きく変わります。
この記事では、傾斜地がある土地の査定額がどのように決まるのか、実際の査定事例を交えながら詳しく解説します。
傾斜地とは?
傾斜地とは、その名のとおり土地の一部または全部が斜面になっている土地のことです。
一般的な住宅地は平坦であることが理想とされますが、丘陵地や造成地では敷地内に傾斜部分が含まれているケースも少なくありません。
例えば、
・土地の一部が斜面になっている
・隣地との間に高低差がある
・崖地を含んでいる
・擁壁によって造成されている
このような土地はすべて傾斜地として扱われる可能性があります。
不動産査定では、土地面積だけでなく「実際に利用できる面積」が重視されるため、傾斜地の存在は評価額に影響します。
傾斜角度30度がひとつの目安
傾斜地を考えるうえで重要になるのが傾斜角度です。
一般的に30度程度までは自然な状態でも安定しているとされ、この角度を「安息角(あんそくかく)」と呼びます。
高速道路や新幹線沿線の法面(のりめん)、河川の堤防などを見ると、比較的緩やかな斜面になっていることが分かります。
これは土砂が自然に崩れないように設計されているためです。
30度を超えると擁壁が必要になるケースが多い
隣地との高低差があり、その角度が30度を超えるような場合には、土砂崩れを防止するための擁壁が必要になるケースがあります。
建築基準法や各自治体の条例によって詳細は異なりますが、急傾斜地では安全性確保のために擁壁の設置が求められることが一般的です。
擁壁とは何か?
擁壁(ようへき)とは、土砂の崩壊を防ぐために設置される構造物です。
コンクリート製の壁をイメージする方が多いでしょう。
擁壁には以下のような役割があります。
・土砂の流出防止
・高低差の維持
・宅地の安全確保
・建物荷重への対応
単に土を支えるだけではなく、住宅が建った際に発生する荷重にも耐えられる構造でなければなりません。
建築上認められる擁壁と認められない擁壁がある
土地の査定で特に重要なのが、擁壁の種類です。
一見すると擁壁に見えても、建築上の安全性が認められないものがあります。
安全性が確認できる擁壁
一般的には、
・鉄筋コンクリート造の擁壁
・適法に施工されたL型擁壁
・検査済証などが確認できる擁壁
などは評価上有利になる傾向があります。
建物の荷重を受けても安全性が保たれることが前提です。
問題となる擁壁
一方で、
・古い石積み
・大谷石による擁壁
・安全性が確認できない擁壁
・違法造成による擁壁
などは査定上マイナス評価になることがあります。
安全性に問題がある場合、将来的に建て替えや補強工事が必要になるためです。
不適格擁壁が査定額を大きく下げる理由
不適格擁壁とは、現在の建築基準や安全基準を満たしていない擁壁を指します。
このような擁壁がある場合、購入希望者は次のようなリスクを抱えることになります。
建物が建てられない可能性
擁壁の安全性が認められないと、建築確認申請が通らない場合があります。
その結果、
・建て替えができない
・建築計画が制限される
・融資審査が厳しくなる
といった問題が発生します。
擁壁の再施工費用が高額
擁壁をやり直す場合、工事費は非常に高額になります。
規模によって異なりますが、
・数百万円
・500万円超
・1,000万円以上
となるケースも珍しくありません。
購入者はこの費用を見込んで価格交渉を行うため、査定額も大きく下がる傾向があります。
傾斜地があると査定額はどれくらい下がるのか?
では実際に、傾斜地が査定額にどれほど影響するのでしょうか。
今回は以下の条件で考えます。
前提条件
・土地面積:150㎡
・特殊なマイナス要因なし
・平坦地の場合の査定額:8,834万円
この土地に傾斜地が存在する場合の変化を見てみましょう。
傾斜地が0%の場合
まずは基準となる平坦地です。
査定額
8,834万円
土地全体を有効活用できる状態です。
建築計画の自由度も高く、市場評価としては最も高い状態になります。
傾斜地が10%ある場合
150㎡のうち10%ですので、15㎡が傾斜地になります。
査定額
8,083万円
下落額
751万円
下落率
約9.4%
興味深いのは、傾斜地が10%だからといって査定額も単純に10%下がるわけではない点です。
実際には9.4%程度の下落という結果になりました。
傾斜地が30%ある場合
続いて土地の30%が傾斜地の場合です。
150㎡のうち45㎡が斜面となります。
査定額
6,581万円
下落額
2,253万円
下落率
約25.65%
傾斜地割合が増えるにつれて、査定額への影響も大きくなることが分かります。
利用できる有効面積が減るため、市場価値が低下するのです。
なぜ傾斜地の割合だけで査定は決まらないのか
ここで重要なのは、傾斜地の面積だけで査定額が決まるわけではないという点です。
実際の不動産査定では、さらに多くの要素を考慮します。
傾斜地の向きによって評価は変わる
特に大きな影響を与えるのが、斜面の方向です。
南側が低くなっているケース
土地の南側が下がっている場合、
・日当たりが良い
・開放感がある
・眺望が良い
というメリットがあります。
住宅購入者にとって魅力的な条件となるため、傾斜地によるマイナス評価を補うことがあります。
場合によっては平坦地以上の人気を集めることもあります。
南側が高くなっているケース
反対に南側が高くなっている場合は注意が必要です。
・日照条件が悪化する
・圧迫感がある
・開放感が失われる
といったデメリットが発生します。
住宅地としての魅力が低下しやすいため、査定額へのマイナス影響も大きくなります。
同じ傾斜地面積であっても、評価が大きく異なる理由はここにあります。
高低差も重要な査定ポイント
査定時には高低差も確認されます。
例えば、
・50cmの高低差
・1mの高低差
・3m以上の高低差
では意味がまったく異なります。
高低差が大きくなるほど、
・擁壁工事費用
・排水計画
・建築コスト
などが増加するため、評価額にも影響します。
傾斜地でも評価が高くなるケース
傾斜地だから必ず安くなるわけではありません。
次のような条件がそろうと、プラス評価になることがあります。
見晴らしが良い
高台にある土地では、
・市街地を一望できる
・夜景が楽しめる
・開放感がある
といったメリットがあります。
オーシャンビューがある
海が見える立地は希少性があります。
特にリゾートエリアでは、
・海が見える
・景観が優れている
・別荘需要がある
という理由から高額で取引されることもあります。
日当たりが優れている
南側が低い傾斜地は日照条件が良くなりやすいため、住宅用地としての価値が高まることがあります。
このように、傾斜地によるマイナス評価を上回るプラス要因がある場合には、結果的に高評価となるケースもあります。
傾斜地付き土地を売却する前に確認したいポイント
売却前には以下の項目を確認しておくことをおすすめします。
擁壁の種類
まず擁壁の構造や築年数を確認しましょう。
図面や検査済証が残っている場合は査定時に提示できるよう準備しておくと有利です。
高低差の状況
隣地との高低差がどの程度あるのかを把握しておきましょう。
傾斜地の割合
土地全体のうち、どれくらいが利用困難な傾斜地なのかを確認することが大切です。
日当たりと眺望
プラス評価につながる要素がある場合は、査定担当者に積極的に伝えましょう。
過去の造成資料
造成工事の資料や擁壁の設計図面が残っている場合は、買主に安心感を与える材料になります。
専門家による査定が重要な理由
傾斜地を含む土地は、一般的な土地よりも査定が難しい不動産です。
なぜなら、
・擁壁の適法性
・高低差
・方位
・日照条件
・建築制限
・景観価値
など、多くの要素が複雑に絡み合うためです。
単純に面積や路線価だけでは適正価格を算出できません。
経験豊富な不動産会社や宅建士による査定を受けることで、土地の本来の価値を正しく把握できます。
まとめ
傾斜地や崖地を含む土地は、一般的には平坦地より査定額が低くなる傾向があります。実際の試算では、土地の10%が傾斜地の場合で約9.4%、30%が傾斜地の場合で約26%以上査定額が下落する結果となりました。
しかし、査定額は傾斜地の割合だけで決まるものではありません。擁壁の安全性や種類、高低差、斜面の向き、日当たり、眺望などの条件によって評価は大きく変わります。特に不適格擁壁がある場合は大幅な減額要因となる一方、南側が低い土地や眺望に優れた高台などはプラス評価を受けることもあります。
傾斜地付きの不動産を売却する際は、まず現地の状況や擁壁の状態を正確に把握し、経験豊富な専門家へ相談することが適正な査定につながる重要なポイントです。
この記事を書いた人

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宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。
「相続した実家、売る?貸す?使う?」
「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会理事兼中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。





