他社に紹介されない!?囲い込みでチャンスが潰れる理由

なぜ、なかなか売れないのか?その裏にある“業界の仕組み”
せっかくプチ遺言を作り、相続させ、不動産を売却に出したのに、
内見の連絡が来ない
他の業者からまったく問合せがない
数ヶ月経っても動きがない
…そんな状況に心当たりはありませんか?
その裏には、あなたが知らない“囲い込み”という慣習が存在しているかもしれません。
表向きには「一生懸命販売活動しています」と言われながら、
実はわざと売らない・他社に紹介させない――
それが“囲い込み”です。
囲い込みとは何か?簡単に言うと「片手仲介のためにチャンスを潰すこと」
不動産仲介には、「両手仲介」「片手仲介」という言葉があります。
両手仲介:売主・買主の両方を同じ会社が担当。手数料が両方から入る。
片手仲介:売主と買主を別々の会社が担当。手数料はそれぞれ片方のみ。
本来であれば、広く情報を公開し、他社の営業マンにも紹介してもらうことで、
少しでも早く、高く、安心して売れるのが理想です。
しかし一部の業者は、「他社に買主を取られたくない」という理由で、
他社からの問合せや内見希望を“断ってしまう”ことがあるのです。
これが「囲い込み」です。
売主に隠れて何が行われているのか?
たとえば、他社の営業マンがレインズ(業者専用サイト)を見てあなたの物件に問い合わせたとします。
他社「◯◯町の物件、内見できますか?」
仲介業者「今ちょうど申し込みが入ってまして…」
実際には申し込みなんて入っていません。
でも、「ウソをついて内見を断る」ことで他社の介入を防ぎ、買主を自分で見つけるまで売らせないのです。
あなたの知らないところで、
せっかくの購入希望者との出会いが断ち切られている可能性があるのです。
どうしてそんなことをするのか?
理由は単純です。手数料が倍になるから。
片手仲介 → 物件価格の3%+6万円(片方のみ)
両手仲介 → 売主・買主の両方から手数料を受け取れる(実質2倍)
この「ダブル報酬」を狙って、
他社からの問合せをわざと断り、自社で買主が見つかるまで紹介を絞る――
それが囲い込みの実態です。
売主の利益よりも、自社の利益を優先しているのです。
その間に何が起こるか?チャンスの損失と価格の下落
囲い込みが行われていると、こんな悪影響が生じます
- 良いタイミングで出会えたかもしれない買主を逃す
- 売れない期間が続き、相場よりも値下げせざるを得なくなる
- 売却活動に対して不信感が募る
- 長期戦になり、心理的・経済的負担が増える
本来なら3,000万円で売れたかもしれない物件が、
囲い込みのせいで「2,700万円でやっと決まった」というケースも珍しくありません。
それはすべて、知らないうちに機会を奪われていたからなのです。
売主が「囲い込み」から自分を守るには?
囲い込みを防ぐためには、売主自身が以下のポイントを押さえることが重要です。
【その1】 専任媒介契約でも、他社の内見が入っているか確認する
定期的に「他の業者からの問合せ、入ってますか?」と質問する
【その2】レインズ登録証明書の発行を依頼する
情報が正しく公開されているかを自分でもチェックできる
【その3】「囲い込みをしない」方針の業者を選ぶ
仲介業者によっては、あえて“片手”でも売主の利益を優先する方針の会社もあります
【その4】両手仲介狙いの営業トークに注意する
「買主も探せます!」という言葉には裏の意図があることも….
まとめ:囲い込みは、あなたの大切な売却チャンスを奪う
不動産売却は、人生で何度も経験することではありません。
だからこそ、「囲い込み」のような業界の事情にはなかなか気づけないのです。
でも、それが原因で数百万円の損をしてしまう可能性もあります。
あなたの物件に興味を持った人がいたのに、
その人が「見せてもらえませんでした」と言って去っていったとしたら――
それは、ものすごくもったいないことです。
囲い込みをしない業者を選ぶこと。
自分の物件がどのように紹介されているかを知ること。
それが、大切な売却成功への第一歩です。
この記事を書いた人
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宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。
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