相続発生から相続した家を売る簡単3ステップ

親から実家を相続したけれど、「何から始めればいいのか分からない」「売りたいが手順がわからない」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。今回は、宅建士の杉山善昭がわかりやすく解説する「相続発生から相続した家を売るための3つのステップ」をご紹介します。これを読めば、相続した不動産の名義変更から売却までの流れがスムーズに理解でき、トラブルを避けて安心して手続きを進められます。

はじめに:相続した家を売る際の基本的な流れ

相続した不動産を売却する際には、大きく分けて以下の3つのステップがあります。

  1. 名義変更(相続登記)
  2. 相続人同士の話し合い(遺産分割協議)
  3. 査定依頼と売却準備

この3つのステップはそれぞれが密接に関連しており、特に名義変更と相続人同士の話し合いはほぼ同時進行で進める必要があります。なぜなら、亡くなった方の名義のままでは不動産の売却ができないからです。まずは誰が相続人となるのかを明確にし、名義変更を済ませることが第一歩となります。

ステップ1:名義変更(相続登記)の重要性と手続きのポイント

相続登記とは、亡くなった方(被相続人)から相続人へ不動産の権利を正式に移すための登記手続きのことです。これをしないと、相続した家を売却することはできません。たとえば、Aさんが亡くなり、その不動産をBさんやCさん、Eさんが相続した場合、法務局で相続登記をして誰が権利を持っているのかを登記簿に記載しなければなりません。

この手続きには専門的な知識が必要で、戸籍謄本や除籍謄本など、多数の書類の準備が求められます。特に戸籍は出生から死亡までの全てを遡って集める必要があり、相続人が多かったり遠方の役所から取り寄せる場合は手間がかかります。

また、法務局は行政サービスの窓口とは異なり、提出された書類の内容が適切かどうかの判断のみを行います。書類の集め方や申請の仕方について細かく教えてくれるわけではありません。こうした理由から、自分で手続きを行うのは難しく、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。

司法書士に依頼すると費用はかかりますが、平日しか対応しない法務局に何度も足を運ぶ手間や、書類不備で申請が受理されないリスクを減らせます。相続登記は義務化されており、放置すると罰則(過料)が科される可能性もあるため、早めに対応することが大切です。

ステップ2:相続人同士の話し合い(遺産分割協議)のすすめ方

相続登記と並行して進めるべきなのが、相続人同士の話し合いです。誰がどの不動産をどの割合で相続するのかを決める「遺産分割協議」がこれにあたります。相続人の確認は意外に疎かになりがちですが、特に再婚家庭などでは親族関係が複雑になりやすいため、戸籍を遡って相続人を正確に把握することが重要です。

遺産分割協議は、法定相続分に従うのが基本ですが、必ずしも法定通りに分けなければならないわけではありません。相続人全員の合意があれば、配偶者が3/5を取得し、子どもたちが残りの2/5を分けるといった自由な割合での分割も可能です。

合意が成立したら、「遺産分割協議書」という書面を作成します。口頭だけの約束では後々トラブルになることが多いため、必ず書面に落とし込み、全員が署名押印することが望ましいです。専門家に依頼して正確かつ漏れのない書面を作成してもらうと安心です。

話し合いが難航する場合の注意点

相続人同士で揉めている場合、不動産業者が間に入って説得することは法律上問題になることがあります。トラブルが深刻な場合は弁護士に相談し、解決を図ることをおすすめします。話し合いがまとまった後に、不動産の売却など次のステップに進むのが安全です。

ステップ3:査定依頼と売却準備のポイント

相続人が確定し、遺産分割協議書も完成したら、いよいよ売却に向けた査定依頼を行います。ここで注意したいのが、相続登記や話し合いが済んでいない状態で勝手に査定を取ることは避けるべきだという点です。相続人の間で誤解やトラブルを招く恐れがあるため、必ず全員の合意のもとで進めましょう。

査定には主に3種類あります。

  • 買い取り査定:投資家や不動産会社に直接買い取ってもらう場合の査定。車の下取りに例えられます。
  • 投資家向け査定:投資目的で購入する買い手を想定した査定。
  • 一般消費者向け査定:マイホームとして購入を検討する一般のお客様向けの査定。

相続した家の売却で一般的に求められるのは「一般消費者向け査定」です。しかし、売却の目的や状況によっては買い取り査定の方が適している場合もあります。たとえば急いで現金化したい場合などです。

査定を複数の不動産会社に一括で依頼する「一括査定サイト」もありますが、営業電話が多数かかってきて混乱するケースが多いため、専門家としてはあまりおすすめしません。査定価格の差は情報源が共通であるため大きくは変わらず、査定額の高さだけで不動産会社を選ぶのは危険です。

不動産会社の選び方と担当者の見極め

査定依頼先を選ぶ際は、会社のホームページやSNSをチェックし、どのような情報発信をしているか、担当者がどんな人柄や知識を持っているかを確認することが大切です。担当者の対応や姿勢が信頼できるかどうかが、売却成功の鍵を握ります。

また、査定依頼時には売却の目的や希望条件をしっかり伝え、どのような提案を受けられるかをじっくり話し合うことが重要です。単に査定価格だけで判断せず、売却計画全体を相談できるパートナーを見つけましょう。

相続した家を放置するリスクと早めの対応のすすめ

相続した不動産を長期間放置すると、相続人が増えたり戸籍の収集が複雑になるだけでなく、相続登記義務化に伴う過料(罰金)が科されるリスクもあります。さらに、相続人同士の話し合いが進まないと、売却どころか管理や税金の支払いも滞ってしまい、トラブルが深刻化することもあります。

そのため、「時間が経てば何とかなる」と放置せず、できるだけ早く相続登記と遺産分割協議を進めることが大切です。専門家に相談しながら進めることで、スムーズに手続きが進み、不安を減らせます。

まとめ:相続から売却までのスムーズな流れをつくるために

相続した家を売却するには、相続登記(名義変更)相続人同士の話し合い(遺産分割協議)をまず確実に行い、その後に査定依頼と売却準備へと進むことが基本です。

名義変更は専門的な手続きが多いため司法書士に依頼し、話し合いは全相続人が納得できる形で書面にまとめることがトラブル防止のポイントです。査定は複数の不動産会社に依頼するより、信頼できる担当者を選び、目的に合った査定を受けることが重要です。

また、相続した不動産を放置すると将来的に大きな問題になるため、早めの対応を心がけましょう。相続税や法律の相談が必要な場合は税理士や弁護士の紹介も活用し、不動産売却の専門家と連携して進めると安心です。

もし相続した家の売却でお悩みなら、まずは専門家に相談することをおすすめします。適切なアドバイスを受けることで、複雑な手続きも効率的かつスムーズに進められます。あなたの大切な不動産を無駄なく活用し、次のステージへとつなげていきましょう。

この記事を書いた人

会社