共有名義の不動産、売りたいのに売れない!その理由と解決策を専門家が解説

「相続した実家を兄弟で共有しているけど、なかなか売却の話がまとまらない…」
「夫婦共有名義の家、離婚したけど相手と連絡が取れない…」
共有名義の不動産を売りたいのに、様々な理由で売却できずにお困りではありませんか?
こんにちは、宅建士の杉山です。今回は、共有名義の不動産がなぜ売りにくいのか、その主な理由と具体的な対処法について、専門家の視点から解説していきます。
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なぜ共有名義不動産は売りにくいのか?よくある3つの問題
共有名義の不動産売却が難航するケースには、主に以下の3つの問題が挙げられます。
- 売りたい人と売りたくない人がいる(意見の不一致)
共有者の中に一人でも「売りたくない」「まだ持っていたい」「自分で使いたい」という人がいると、全員の合意が必要な不動産売却は進みません。人の数だけ意見があるため、意思統一が難しいのが共有不動産の側面です。 - 共有者に意思能力がない(認知症など)
共有者の中に認知症などで判断能力が低下している方がいる場合、その方の「売却する」という意思確認ができません。不動産の売買契約には、売主全員の明確な意思表示が不可欠なため、売却手続きがストップしてしまいます。 - 共有者が行方不明
共有者と連絡が取れない、どこにいるか分からない場合も、売却に必要な同意を得ることができず、手続きを進めることができません。
これらのいずれかに当てはまると、スムーズな売却は困難になります。
意見が合わない理由とその背景
なぜ共有者間で意見が合わないのでしょうか?よくある理由を見てみましょう。
- 思い出があって手放せない: 特に長年住んだ実家などには感情的な愛着があり、「帰る場所」を失いたくないという気持ちから売却に抵抗を感じるケースがあります。(私の経験では、この理由で売却決断まで3年かかった方もいらっしゃいました)
- 将来価値が上がると思っている: 不動産価格の上昇を期待して、「今は売り時ではない」と考える方もいます。(近年、コロナ禍で一時的に不動産価格が上昇した時期もありました)
- 単純に相手が嫌い・信頼できない: 家族間の人間関係が複雑で、感情的な対立から相手の提案(売却)に反対するケースや、過去の相続トラブルなどが原因で不信感があり、協力が得られないこともあります。
家族内であっても、意見が分かれることは決して珍しいことではありません。
時間が解決することもある?
すぐに解決が難しい場合でも、時間の経過とともに状況が変わることもあります。
- 維持費の負担: 固定資産税や修繕費など、不動産を維持するための費用は継続的に発生します。この負担が大きくなるにつれて、「やはり売却しよう」と気持ちが変化するケースは多いです。
- 経済的プレッシャー: 維持費の負担増や、他の経済的な理由から売却を検討し始めることがあります。
- 気持ちの変化: 時間が経つことで、当初は売却に反対していた人の気持ちが変化し、合意形成に至ることもあります。
ただし、時間が解決を待つ間に不動産の価値が下がってしまうリスクや、管理の手間がかかることも考慮する必要があります。
具体的な対処法:状況に応じた選択肢
では、具体的にどのような対処法があるのでしょうか?状況に応じていくつかの選択肢があります。
- 分割の訴訟(共有物分割請求)
共有者間の協議で話がまとまらない場合の最終手段です。裁判所に訴えを起こし、不動産の分割方法(現物分割、代金分割、価格賠償など)を決めてもらいます。- メリット: 相手の同意がなくても法的に解決できる可能性がある。
- デメリット: 時間と費用(弁護士費用など)がかかる。必ずしも希望通りの結果になるとは限らない。精神的な負担も大きい。
- 相手に自分の持ち分(権利)を買い取ってもらう
他の共有者に、自分の持ち分を買い取ってもらう方法です。- メリット: 不動産全体を売却するより話がまとまりやすい場合がある。
- デメリット: 相手に買い取る意思と資金力が必要。価格交渉が必要になる。
- 自分の持ち分(権利)だけを第三者に売る
自分の持ち分だけを、専門の買取業者などの第三者に売却する方法です。- メリット: 相手(他の共有者)の同意は不要。比較的早く現金化できる可能性がある。
- デメリット: 市場価格より大幅に安い価格での売却となることが多い。買い取った第三者と残りの共有者との間でトラブルが発生する可能性がある。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、状況に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
【ケース別】認知症・行方不明の場合の対応
共有者が認知症の場合
- 医師の診断: まずは専門医による認知症の診断を受け、診断書を取得します。
- 裁判所への申し立て: 診断書をもとに、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立てます。
- 後見人による売却: 選任された成年後見人が、本人(認知症の方)に代わって財産管理を行い、裁判所の許可を得た上で売却手続きを進めます。
※成年後見制度の利用には、後見人への報酬など費用が発生します。また、後見人は本人の財産を守る立場のため、売却が必要と判断されなければ売却できない場合もあります。
共有者が行方不明の場合
- 相手を探す: 住民票の調査や戸籍の附票の取得、場合によっては探偵に依頼するなど、可能な手段で相手の所在を探します。
- 弁護士への相談: 自分たちで探しても見つからない場合は、弁護士に相談し、法的な対応を検討します。
- 不在者財産管理人選任の申し立て: 裁判所に申し立てを行い、行方不明者に代わって財産を管理する人(不在者財産管理人、多くは弁護士が選任される)を選任してもらい、その管理人が売却などの手続きを行います。
※単に「連絡を取っていないだけ」というケースも多いため、まずは連絡を試みることが大切です。
まとめ:解決への道筋は必ずある!
共有名義不動産の問題は複雑で、精神的にも負担が大きいことが多いですが、解決への出口は必ずあります。
解決を妨げる主な障害は、**「意見の不一致」「意思能力の欠如」「行方不明」**の3つです。
大切なのは、焦らず、冷静に状況を把握し、準備を進めることです。そして、一人で抱え込まず、信頼できる専門家(宅建士、弁護士など)に相談することが、解決への最も確実な第一歩となります。
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この記事を書いた人
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宅地建物取引士、建築士、公認不動産コンサルティングマスターなどの有資格者。「杉山善昭の不動産ワクチンがいまなぜ必要か?」著者
(公社)神奈川県宅地建物取引業協会中央無料相談所相談員。
1990年から不動産業界に従事、2005年(有)ライフステージ代表取締役就任。
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